このレビューはネタバレを含みます▼
祖父母の遺した一軒家で盆栽屋を営む吉良薫は、ネットやお得意との取引以外は近所のお年寄りの茶飲み話に付き合う静かな日常を送っています。ある日、派手なスーツの青年が、ほぼ枯れている山茶花の盆栽をじっと見ていることに気が付きます。青年は毎日のように訪れ山茶花を見ていました。そんな中、作業員風の男が薫の家の前で倒れます。過労で倒れた男は橘李一と名乗り、空間デザイナーで近くのカフェで仕事をしており、毎日盆栽を見ていたと言います。枯れた山茶花を見に来ていた派手スーツの青年は橘だったのでした。薫の手当てを受け、食事までご馳走になった橘はそれから頻繁に薫の下を訪れるようになり、橘が仕事を請け負っているカフェの店長•九重も交えての交流が深まってゆきます。枯れかけた山茶花を薫が大切にする理由、橘が拘る訳も明かされ、ノンケの二人は自分達の持つ感情と対峙することとなります。悩む橘の相談にのるのが、バリバリのゲイでタチ寄りのリバ・九重店長です。九重店長のそちら方面の活躍は『恋、飛沫、思ヒソメシカ』でどうぞ。淡々と仕事をし、食事を大切にし、植栽や猫にも細やかに接する薫の丁寧な生き方が、橘と共に読者も癒やしてくれます。