チ。―地球の運動について―
」のレビュー

チ。―地球の運動について―

魚豊

地上の星

ネタバレ
2022年8月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作品に出てくる主人公たちは、歴史に名を残した偉人たちではない(そもそもフィクションの世界の登場人物じゃあないか、と言う事は置いておいて)。
名もなき「チ」を求め旅を続ける者たちの物語。
しかも「チ」を探究する主人公たちではあるが、決して清廉潔白な人間ではないのも魅力的と思った。
彼らが求める「チ」は作品中では異端扱いされる。それでもまた数年後・数十年後に新たな「チ」を、受け継ぐ人がいる。
名前も知らない誰かの残した歴史というバトンを新たな主人公が受け継いでゆく。何のために?ある人は真理のために、ある人は自由のために。
一つ間違えれば「処刑」される。死と隣り合わせの中で彼らはどこまでも「チ」を求めてゆく。そこまでの「チ」へ向き合う勇気が私にあるだろうか?命にかえてでも貫き通す覚悟を持っているのだろうか?とマンガを読みながら自分自身に問いかけていた。
このマンガの世界と現実の世界には似ているところが多い。
今の時代でも当時よりは良くなったかもしれないが、それでも当時と似通った足枷が作中に登場する。だからこそ、読み手は主人公たちの気持ちに同調するのではないだろうか。
主人公たちが空を見上げている場面が多々あるのだが、そんな彼らがレビュータイトルのような存在なのだと思った。
そしてきっと、これは個人的願望に過ぎないが自分含め読み手も同じくレビュータイトルのような存在だろう。
長くなってしまったが、この作品は「面白い」「面白くない」で表現できる作品ではなく「心底出会えて良かった」と思える作品だ。
いいねしたユーザ24人
レビューをシェアしよう!