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今月(5月1日~5月31日)

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シーモア島
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投稿レビュー
  • ペリリュー ─楽園のゲルニカ─

    武田一義/平塚柾緒(太平洋戦争研究会)

    戦争の中のほんの少しの青春のひとかけら
    ネタバレ
    2026年1月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 一言で表すのであれば、なにも包み隠さないありのままの戦争。敢えて“漫画家”という言葉を使いますが、漫画家田丸の目から見たそのままの戦争がそこにありました。目を背けたくなるほど残酷で混沌とした、漫画の題材になんてとんでもない。展開に文脈も筋道もあったものではありません。物語の途中だろうとお構い無しにただ死んだからそこまで。……ですがそれが現実ありのままに起こった「戦争」なのでしょう。
    この漫画は、何も隠さないからこそ戦争の残酷さ、悲惨さだけではなく、美しかったこと、楽しかったことが原寸大で目の前に描かれます。作中でも言及されていますが、それを「不謹慎だ」と言う人もいるでしょう。私は不謹慎であることを否定しませんし、断じてこれまでもこれからも戦争を「美しい」ものだと表していいはずがないと思っています。ですが、青春を奪われた20そこらの青年達の、戦争の中のほんの少しの「楽しい」を、否定するのは忍びないと感じてしまうのは私のエゴでしょうか。
    「国のために人を殺した軍人達は悪か」これに関しては、今にも通じる問題と言えましょう。人を殺すことは悪であり、違いのない事実です。ですが、あの時彼らは何のために殺したのか。愛する自国がこの先も続いて欲しい、家族を守りたい、生きて帰りたい、死にたくない。全て、今を生きる誰にでもある当たり前の望みです。この望みを当たり前にするために、彼らは銃を取り、そして今があります。その抵抗に何の意味もなかったとしても、ここに1人、あの時何があったのかと思いを馳せる日本人がいます。
    あの時、もう80年も昔。私のような戦争を知らない20そこらの小娘にとっては、教科書に載っている「歴史」の1ページ。その1ページの中で、血みどろになって戦った人間がいたことを、手で触れることができたような。そんな現実の戦争のはなしでした。
  • 自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。

    蓮見ナツメ/しき

    よくいるスカした腹黒王子様キャラクター
    ネタバレ
    2025年12月2日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 初めはセシルのことをあぁよくいるスカした腹黒王子様系キャラクターね。と思ってどこか冷めた気持ちで読んでいたのです。しかしこのスカした腹黒王子様、婚約者のことになると慌てたり腹を立てたり存外感情豊か。
    この物語の凄いところは「人に興味を持てないスカした腹黒王子様」が感情を揺さぶられる女性。に非常に説得力があるところです。この物語の主人公であるバーティアの魅力は何と言っても作中で馬鹿と罵倒されるレベルの向こう見ずな善性です。何でも持っていてなんでもできるセシルが唯一持っていないものは善悪を判断する力です。だからこそバーティアという善性の塊が隣にいることにより、良い方向へ進んだのです。バーティアは乙女ゲームの主人公にはなり得ないでしょうが、セシルの唯一には彼女しか成り得なかったでしょう。
    結局セシルは最後までスカした腹黒王子様でした。ですが、一度バーティアを失って涙を溢した彼は、決してよくいるキャラクターではなく、血の通った「セシル」という1人の人間でした。
    人を弄んで、蔑んできた彼が、初めて唯一を知り、唯一を通して人を慮ることを知る。
    だからこそ終盤の彼のあの涙が沁みるのです。
    この物語は歯に衣着せぬ言い方をするのであれば、よくいるあるあるのキャラクター達で構成されています。その彼らが、バーティアという特異点を中心にこの物語独自の個性を持ち、意志を持ち、今までになかった物語を生きていく姿がどうしようもなく力強く、尊いのです。それはヒロインも例外ではなく、最後に自分の意志で、自分の足で「ヒローニアの物語」を後にします。彼女はこの物語のヒロインにはなれませんでした。ですが、これから先も彼女の物語の主人公は間違いなく彼女なのでしょう。個人的にとても好きな結末を迎えた人物でした。
    初めはよくある物語と思い読み始めましたが、いつの間にかバーティアの言動に笑い、周りの友人達と一緒に慌て、最後にはセシルの涙にこちらまで涙を溢すほど、物語に引き込まれてしまいました。一人ひとりに血が通ったとても良い物語を見せて頂きました。
  • チ。―地球の運動について―

    魚豊

    激動の時代と人間賛歌!!
    ネタバレ
    2025年3月11日
    このレビューはネタバレを含みます▼ アニメが切っ掛けで一気読みをしました。
    内容はなかなか難しい言い回しなども多く、読むのに少し苦労しましたが、そんなもの屁でもないくらい読んで良かったと思える作品でした。
    この物語は全巻通してバトンリレーをしているのです。それは石箱に詰められた知識であったり、想いであったり形を変えますが、確かに「感動」という名前を持って人々の手から手へと繋がっていきます。最終的に何も成せなかったとしても、そこに足掻いた誰かがいたという事実は残ります。「不正解は無意味ではない」のです。
    なによりも知識を追い求めて、今まで世界になかった新しい知に手を伸ばす人々のなんと美しいことか!自分のために、誰かのために少しでもより良い方へ進もうとする登場人物達は皆いきいきとしていて輝いていました。
    この物語は天動説VS地動説のような構図を取っており、終始天動説を支持する方が敵のように描かれますが、決して宗教が悪とされるわけではなく、神を信じる人間の弱さ、強さ、気高さが描かれているのがこの作品の素晴らしいところだと思います。神を信じることは悪ではない。自分と意見が違うからといって悪ではないのだと叫んでいるようでした。
    読んだあとに大きな溜め息をついてしまうような、壮大でどうしようもなく切実な想いが込められた良い作品でした。出会えて良かったです。
  • 夏目アラタの結婚

    乃木坂太郎

    まさかここまで泣かされるとは思わなかった
    ネタバレ
    2024年10月5日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 冒頭奇をてらった設定で、あっという間に引き込まれました。一時も気を抜けないギャンブルにも近い綱渡りのような緊張感が常にあって、片時も気を抜けない非常に爆発力の高い漫画です。
    この物語の本筋は「品川真珠とは何者なのか?」これに尽きると思います。嗜虐性を全面に推し出しつつも、桃ちゃんの見る弱くて普通の女の子なパールが本質のように見えて、偽りで、でも本当でというような決して裏表では測れない品川真珠の複雑な精神性が非常に高い解像度かつ生々しい形で描かれます。
    対するこの作品のヒーローである夏目アラタは凡庸な言い方をするのであれば、どこにでもいるチンピラ上がりの一般人です。知恵もなければ演技力もあまりなく、最初は真珠の手の上でコロコロされておりました。ですが共感性が高く、人の心、特に心に傷を負った人の心の裏を読む能力は人一倍優れています。別に真珠もアラタでなくても良かったと思うんです。ですが、真珠に真っ向から向き合って、人としてぶつかって、寄り添い続けたのはアラタだった。それだけのこと。でもだからこそ、この2人だったからこその大団円でした。
    この作品、登場人物の一人一人の“家庭”をとても丁寧に描いているのが印象的でした。結婚相手が見つからなくて、何度も離婚していて、奥さんが何か隠し事をしていて、結婚なんて自分にはできないと知っていて。一つとして普通の家族などないのだと。皆どこかに言えないこと、できないこと、後悔があって、それをやり過ごしながら誰かと生きているんだと。
    個人的に今作1番心を掴まれた登場人物は藤田でした。女房に逃げられ、子供もなく、寂しく暮らす中年男性の解像度が異様に高い。アラタと真珠を受け入れたのは非日常への渇望もあったでしょうが、純粋に2人を祝福する面もあったのでは思います。夕飯何がいい〜?と去っていく2人に尋ねる藤田が本当に寂しそうでまさかここであの藤田に泣かされるとは思いませんでした。被害者の3人もそうでしたが、あぁ本当に真珠は沢山の人に背中を押されて、歪でも守られていたんだと目頭が熱くなりました。
    初めからずっとここから入れる保険があるんですか!?状態で、正直まさかハッピーエンドになるとは思っていませんでした。
    ずっと誰かを待っていた真珠が、笑顔でおかえりと、愛している人を迎え入れられる、そんな最高のハッピーエンドを見せていただきました。
  • 悪癖 【電子限定特典付き】

    イイモ

    結局はあまりにも真っ直ぐで透明な愛の話
    ネタバレ
    2024年3月20日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 最初はなんてアブノーマルな話なんだ…と登場人物達の嗜好に翻弄されながら、次はどんなトンデモ嗜好が出てくるのかと楽しみにして読んでいたのに、いつの間にかまるでひと夏の恋のような繊細な恋物語になっていて、先生の描写力にひっくり返りました。
    全巻を通して小島はずっと大門を試していて、試しながらも必ず彼が応えてくれないことを視野にいれているのが、小島の愛に対して抱える不信と臆病さが滲んでいて読んでいて辛い…。けれど安心して読めるのは小島が試している大門は普通の男ではないからなんですよね!冒頭の方ではネガティブな意味として使われていた訳の分からない不気味な“怪物”というワードが、最後の方になってどんな手を使ってでも愛し通すという頼もしい意味合いに転ずるとは!小島の複雑怪奇な頭の中を理解はできなくても何もかも許容してくれる大門は本当に小島に出会うべくして出会ったんだなと…。この根っからの優しさと気づけば心臓を握られているようなぞっとする面を持っているのが大門の魅力だと思います。小島は何もかもを掌で転がすことができるのに、いざ自分のこととなると途端に疎くなってしまうのが可愛くて!お互いに翻弄して翻弄されてを繰り返しているのがもうなんかお前ら一生やってろという気分にさせます。おじいちゃんになるまでね。
    この漫画本当に温度差が凄くて、がんじがらめに悩んでいたと思えば、頭を空っぽにして相手に向かって走り出したり、一時足りとも目が離せなかったです。
    メイン2人が最高なのはもう言うまでもないのですが、脇を固める登場人物達が本当に魅力的です。全員が自分のために、もしくは誰かのために必死で悩んで、選んで、最善の未来のために奔走しているのが愛おしくて泣いてしまいました。須藤さんマジでいい女過ぎる…幸せになって…。岩蔵~!安川さんとみよちゃんと幸せになれよ~!!
    話の作り込みも緻密で「全部青」のシーンは全身に鳥肌が立ちました。BLもののはずなのにまるで本格ミステリーを読んでいるような気分になります。
    今となってはもう取り返しの付かない過去や、変わりようのない現代の風潮を、どうしようもないこととしつつも前に進んでいく登場人物たちの姿が眩しいです。
    死ぬほど紆余曲折七転八倒していたはずなのに、終わってみれば一本のあまりにも真っ直ぐで透明で綺麗な愛のお話しでした。
  • 死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから

    白川蟻ん/六つ花えいこ/秋鹿ユギリ

    毎秒全方位切なくて美しい!
    ネタバレ
    2024年2月14日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 最初に言わせて欲しい!あまりにもキャラ造形と相関図が美しい!毎巻泣いた!
    いわゆる巻き戻りもので舞台は魔法学園というともすればチープになってしまいそうな設定なのに作り込まれた重厚な世界観と一人一人魂の入った登場人物に心奪われる!
    主人公のオリアナは恋人を救うという確固たる意志を下地にしつつも明るくひょうきんで、恋人が死んだ前世からの死に戻りというサスペンス味が強く、暗くなりそうなところを上手く中和してる!
    あとヴィンセントに「可愛い」って言ってもらいたいが為にちゃんとお洒落してるのが最高に好きで!メイクしてる描写があるし、髪も綺麗に巻いてピアスの種類も沢山あって好きな人が身近にいる女の子という説得力!概念にぶん殴られる!甘酸っぺぇ!可愛い!
    ヴィンセントは紳士然とした正統派王子様で、はいはいいるよねこういうスカしたキャラって思ってたんだけど、オリアナが今まで見ていたのが自分ではなく前世の「ヴィンス」だと気が付いたとき、あまりにも切なくて踞った。そんなしんどいことある?出会いは歪だったけど、色んな出来事を経てオリアナをそこそこ知ってると思ってたら、その知ったことが全て自分が知らない誰かのためのもので、想いも全部その相手に向けられてたとか無理…切なすぎる…。彼女は多分雷に怯えてるところを助けてくれるような貴方だったからこそ好きなんだと思うんですけどね。お前もっとしゃんとしやがれ!という場面も多々ありますが、決めるところは決める格好いい最高のオリアナのヒーロー!
    そして周囲の友人達の距離感が最高で!1人たりとも嫌なやつがいないんだよ!噂話をする生徒や出歯亀をするメイドさん達さえ!苦労人のターキー委員長やマッドサイエンティストと噂されるけどわりとちゃんとした大人なハインツ先生、厳しそうだけど生徒想いの先生、1人1人に配慮があり、思考をして動いている説得力が凄い!
    あとミゲル~!お前マジでいい男だなぁ!思うところありつつもオリアナとヴィンセントの良き友人としてこれ以上ない立ち回りをしてる!
    ヤナ様のオリアナへの距離感も絶妙で!わかる!仲良い女友達ってこれくらいの距離感よね!ヤナ様とアズラクの関係性も切ないんだこれが…どうしたら…つら…。もっとシャロンのこととかクラスの皆のこととか書きたかったけど文字数が足りないっ!とにかく最高の物語です!これからも続きを読むのが楽しみ!
  • 毒を喰らわば皿まで

    十河/斎賀時人

    いつもより愛憎背徳倒錯多めな第4巻!
    ネタバレ
    2023年12月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 新刊もめっっっっっちゃ良かった…
    この作品のどの結末にも最後のたった数ページでやられた~!!って感情になるのが最高に気持ちがいい!
    竜の子のサブタイトルがアンドリムとヨルガの血統に重ねてるのは途中で気が付いてたけど、てっきりシグルドのことだとばかり…!穏やかで優しいジュリエッタが最後の最後で見せた凄惨なまでに美しい悪役令嬢としての顔に、これはアンドリムの娘~!血が強ぇ~!とひっくり返りました。これの何が最高って恐らくシグルドは妻が水面下でしていたことを一切知らないという点なんですよね…。やだそっくりこの父娘…。猛毒を孕んだ美しい大輪の花…。
    今回は話の展開上濡れ場少なめ?な気がするけど、既刊の物語に比べ、5年の積み重ねを感じさせるというか情感ある濡れ場が多かった。戸惑うヨルガにものを教えるアンドリムが愉悦を多分に含んでたのが最高にアンドリム。それでもやっぱりいつもの彼ではないと感じる場面が本当に切なかった。アンドリムの気質もあってか悲壮感なんぞ欠片もなかったけど、記憶が戻ったヨルガに対するアンドリムの態度から、心の底では寂しかったんだなと…。10年前の記憶を辿るまで記憶のないヨルガに手を出させなかったところが…本当に…。健気というか純愛というか…。愛…。
    ちょっとした展開も普段身長に合わない椅子に座って調べものしてるんだ、とかいつもの習慣でつい部屋を間違えるのはやっぱりヨルガ関連で気が弛んでるんだろうな、とかベッドサイドに精油を常備してあって、メイドが慣れた様子で準備しているということは、普段からヘッドマッサージしてあげてるんですか、とか5年分の普段の彼らを垣間見れたのが僥倖。ゼロに戻ったヨルガと一緒に読者もそれを追体験しているようで臨場感があって楽しかった。
    アンドリムが無意識で墓参りに行ってしまうほどユリカノを愛していて、亡き後も心の深くに残っているっていうのが些か意外だった。けどそんなアンドリムの表面化した弱さ、脆さを目の当たりにして劣情を抱くヨルガは本当に成るべくしてアンドリムの番になったんだなって…。愛した女、亡き妻の墓の前でそれをやるのが最高に倒錯的。
    1巻の最後にたどり着いた結末に、どのようにして彼らは至ったのか、を少しずつ紐解いていくこの物語の行く末をリアルタイムで追えるのが本当に幸せで楽しい。これからも楽しみな作品。