このレビューはネタバレを含みます▼
一言で表すのであれば、なにも包み隠さないありのままの戦争。敢えて“漫画家”という言葉を使いますが、漫画家田丸の目から見たそのままの戦争がそこにありました。目を背けたくなるほど残酷で混沌とした、漫画の題材になんてとんでもない。展開に文脈も筋道もあったものではありません。物語の途中だろうとお構い無しにただ死んだからそこまで。……ですがそれが現実ありのままに起こった「戦争」なのでしょう。
この漫画は、何も隠さないからこそ戦争の残酷さ、悲惨さだけではなく、美しかったこと、楽しかったことが原寸大で目の前に描かれます。作中でも言及されていますが、それを「不謹慎だ」と言う人もいるでしょう。私は不謹慎であることを否定しませんし、断じてこれまでもこれからも戦争を「美しい」ものだと表していいはずがないと思っています。ですが、青春を奪われた20そこらの青年達の、戦争の中のほんの少しの「楽しい」を、否定するのは忍びないと感じてしまうのは私のエゴでしょうか。
「国のために人を殺した軍人達は悪か」これに関しては、今にも通じる問題と言えましょう。人を殺すことは悪であり、違いのない事実です。ですが、あの時彼らは何のために殺したのか。愛する自国がこの先も続いて欲しい、家族を守りたい、生きて帰りたい、死にたくない。全て、今を生きる誰にでもある当たり前の望みです。この望みを当たり前にするために、彼らは銃を取り、そして今があります。その抵抗に何の意味もなかったとしても、ここに1人、あの時何があったのかと思いを馳せる日本人がいます。
あの時、もう80年も昔。私のような戦争を知らない20そこらの小娘にとっては、教科書に載っている「歴史」の1ページ。その1ページの中で、血みどろになって戦った人間がいたことを、手で触れることができたような。そんな現実の戦争のはなしでした。