ハレの日【分冊版】
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ハレの日【分冊版】

朝田ねむい

この作品に辿り着けたことが嬉しくなる作品

2022年8月9日
作者買い。期待に違わずどころか想像を遥かに上回る完成度の高い素晴らしい短編だった。たった44ページの中でこれだけの人生を魅せてくれるとは。これだけ心を動かしてくれるとは。長編も上手いストーリーテラーの先生が、今作では短編だからこそ引き立つ語りと展開でぐいぐい読ませてくれる。先生の作品にはいつも試練から自ら這い上がる力がモチーフとして存在していて、今作でも、ゲイのアイデンティティという直球のテーマでそのモチーフが生きている。父と子にスポットを当て、彼らと彼らを取り巻く人々がひたすら毒のない愛に満ちている。愛に満ちていても、やはり試練はあり、それぞれが切なさや辛さを乗り越えて前を向いていくその推進力の強さを支えるのはやはり愛だという、二重の構造が素晴らしく、夢があった。重ね重ね、この充足した内容で短編だとは恐れ入る。毒のない先生の作品は珍しいけれど純粋な感動作でも素晴らしい。天才的なクリエイターだと思います。
自分にとって、短編の傑作『たったひとつのことしかしらない』に並ぶ忘れられない作品となりそう。
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