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南月ゆう

期待以上の面白さ&旭匡の夫婦漫才も健在

ネタバレ
2022年8月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ ラブネストでお馴染みのナルさんのお話ということで、最初はポリアモラスな関係が中心で、そこに新たに参入する新入りくんを通してナルハーレムがどう形成されたかを紐解いていく系のお話なのかなと勝手に思い込んでおり、いつか読もう〜くらいの緩い気持ちで遠巻きに眺めていただけだったのですが、単行本発売に伴い試し読みを読んだところ、poly中心というよりも、年に1度しか会えないナルさんを長年恋慕う、たい焼き屋の息子・盟(めい)とナルの二人の関係性にフォーカスが当てられたお話で、いい意味で予想外で、これはすぐに読まなくては!となりました。
南月さんの作品にハズレはなく、その面白さは読む前から既に保証されているようなもので我々読者は何の心配もせずに、南月さんが紡ぐ濃密な物語の中にただダイブするのみ…と言えども、そう簡単には前作の面白さを超えてはこないだろうと鷹を括って(?)いたところ、現時点ではまだ二人の関係は恋愛に発展してすらいないというのに、胸キュンありミステリーありの謎解き的な読む楽しさが随所に散りばめられた作品で、1巻にして既に名作と銘打ちたくなる面白さ満載で平伏しました。
正直なところ、読む前はナルさんへの関心はそこまで強くなかったのですが、読み終わった今は、ナルさんの来し方行く末を全て知りたい…!!という好奇心でいっぱいです。シリーズを通して既にその一側面を見ていた、謎多き不動産王ナルさんをめぐる物語がここまでの広がりと深みを持つことになるとは…とただただ感服するばかりです。そんなナルさんへの関心が高まったのも、ナルさんに心酔する純粋でひたむきな盟という愛すべきキャラクターの視点を通してこそで、そんな彼の繊細な感情と舞台となる別荘の情景や夜空の美しさとが相まって、切なさから愛おしさまで色んな感情が湧き上がってくる作品でした。

以下、⚠️ネタバレ⚠️を含みますが、盟の想いが純粋な恋なのか依存なのか、盟を「宝物」と形容するナルさんの「愛してるよ」は家族愛にとどまるものなのか、ナルさんは義理兄にどんな感情を抱いていたのか、そして怪しさしかないライター林田の思惑は何なのかなど、まだまだ明かされていないことばかりで先の展開が気になるクリフハンガー状態で1巻は終わっていますが、まだ「土台」部分だからといって物足りなさを感じることは一切なく、読み終わった後は充足感で満ち足りること必至です。
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