あいをしる星【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】
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あいをしる星【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】

池森あゆ

幸薄DKと一人暮らしの叔父とが見上げる星

ネタバレ
2022年8月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 32歳独身の橋本隆宏は、蒸発した姉の子供•綾と暮らすことになります。10年前の祖父の葬儀の夜、一緒に縁側で流星群を見た儚げな少年は面影そのままに、母親のDVとネグレクトから感情を出さない高校生に成長していました。橋本の生活リズムを崩すこと無く料理や洗濯を影のようにこなしてゆく綾ですが、それは嫌われないように捨てられないように精一杯頑張る姿なのでした。二人で訪れた水族館で、海の中を空みたいだと呟く綾は、祖父の葬儀のことは何も覚えてないけれど、一緒に見た流星群とおじさんのことは覚えていたと言うのでした。二人の生活に慣れてきた綾は時折笑顔も見せるようになり橋本は綾を可愛く想うのですが、そこに叔父と甥には許されない感情が潜んでいることに気づきます。未成年である綾へのその感情は、世間的には性的虐 待と言われるものに直結し、姉と同じことをしかねない自分に愕然とする橋本は、綾を施設に送り出すことを決めるのでした。言葉少なく表情も乏しい綾の不憫さに胸が痛みます。エロ展開はありませんが、歪な育ち方をした綾に、まずは沢山の愛と安心を与えたいという橋本の決意なのでしょう。幸せな恋人となる未来を予感させる最後でした。
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