ハッピーモーメント【分冊版】
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ハッピーモーメント【分冊版】

野津いぬま

その時、その瞬間の

ネタバレ
2022年8月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ *野津先生の『君とハネムーンにさらわれて』がすごく良くて、こちらにも手を伸ばしました。
バドエン苦手な私だけど大丈夫だろうか…とドキドキしながら。

結論、大丈夫でした。
ていうか良かったです。
確かに全くハッピーエンドじゃないしそれを期待していない(絶望している)ままのエンド。
でもこれ、、本当にハッピーエンドにはなりえない2人なのかな??
だってこの2人、カケラも別れる雰囲気ないじゃないですか。
一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、変化が起こる可能性は高まる…アリだと思いますよ、いつか、ハッピーになる2人の未来も。

しかし作者様も読者も「今」その結末を見ることは望んではおらず、あくまでもこのクズな2人のどうしようもない泥沼を堪能するところに留めておく作品だという…悪趣味やなぁ我々も(笑)

タイトルも秀逸でした。この作品がなぜ『ハッピーモーメント』というタイトルなのか、そりゃもう読者としては少なからず考えちゃいます。読み終わってすぐ2周しましたもん。
私見で恐縮ですが、以下私なりの解釈です。
みのりが駅前で再会したのは憧れ続けた幻想の先輩ではなく、自分と同じクズに成り果ててる先輩だった。だからこそ、みのりは先輩をリアルに抱けた。とても酷い状況で、クズらしく。
どう考えても報われるわけはないのはわかってる、それでも先輩に触れているその瞬間は幸せで(手を掴む時でさえ)…事後、現実に絶望して…また幸せの絶頂を味わって…の繰り返し。
その時、その瞬間の幸せ、それだけを縁(よすが)にしているみのりの(今の)生き様がタイトルになっているのかな、と。

ああいつか何かの奇跡が起きて、この2人にハッピーエンドが訪れると良いな。
そう願ってしまう作品でした。
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