このレビューはネタバレを含みます▼
ある日の冬の朝、トラック事故に巻き込まれる高校生二人の物語。終わりの始まりとも言うべく【浩一の心臓が動いていない】という、メリバ必須の滑り出しです。幽体離脱系のありきたりな話に捻りを効かせ、死体になって動き続けるというコミカルな作風。死体が腐らないか?と懸念、血痕を洗い流したり、燻製っぽくなってきたなどのリアルな表現も出てきます。荒削りな部分もあり、他の人の記憶の抹消、家族の反応など都合の悪い部分にはあまり触れていません。話の整合性や伏線回収(まぁ特段伏線らしい伏線もないのですが)も及第点とは言いがたいかもしれないです。
ただ、榎田先生の小説の良さはとにかく読みやすいこと。コミックスさながらに読み進められます。綺麗な文章を捏ねくり回して書かれるものも魅力的ではありますが、先生の作品は心情に全シフトされています。そのため、主人公への感情移入が凄まじく、胸が張り裂けそうとある部分では「こっちの胸も裂けそうや」と鼻を啜りました。何故だか凄く泣きたい時ってありますよね。そんな時に手にすると(サイコパスでも無ければ)100%泣ける作品だと思います。