イノセント・デイズ(新潮文庫)
」のレビュー

イノセント・デイズ(新潮文庫)

早見和真

作品への評価

ネタバレ
2022年8月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読後は三日寝込むというオススメ(笑)の本。
体調万全で読みました。

読み始めから、おそらく冤罪事件なんじゃないかと予測する。報道から受ける事件の容疑者像と、彼女と実際に関わった人々の中にある人物像との乖離。章ごとに彼女と関わる人物は変わるのだけど、歳を追うごとに状況は悪くなっていくばかりで、まるで救いが見出されないのが辛い。特に第三章は負の連鎖で、必要とされていると信じていた幸乃に対して、保身に走り利用価値しか見えなくなってしまった理子との関係が、どうしてそんなことになってしまったのかと、いつまでも気持ちが晴れない。幸乃は最初から最後まで、理子のことを心根は優しい子だと見抜いていたのに。そう、幸乃は本質を見抜ける子だなというのは、翔と慎一を比較するとよく分かる。(ドラマ化されてたんですね。翔…新井浩文、慎一…妻夫木聡、なるほど。)
色んなことが、ちょっとずつズレたり掛け違えたりしてしまったことで取り返しのつかないところまで行ってしまったお話、と取れる。

産婦人科の丹下先生、幸乃の母のヒカル、それから慎ちゃん。読んでいるページが明るく光っていたのはこの人たちが自分のやるべきことを一生懸命全うしようとする姿がそこにあったから。
明るさが際立ったのは、慎一が八田と最後に公園で会うシーン。慎ちゃん頑張れ!と初めて涙が出た。
ここから何とか逆転無罪をと願うも…この本の表紙の不穏さから、多分それはないだろうとも推測…。
内容の胸糞悪さに比して、構成は素晴らしく、その物の香りや温度などが感じられる表現もリアルで、物語としてよく出来ていると思う。オススメいただいた方に感謝です。
⭐︎5は純粋に作品への評価。とても面白かった!
いいねしたユーザ4人
レビューをシェアしよう!