シャングリラの鳥
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シャングリラの鳥

座裏屋蘭丸

熱気と夜と潮の香り

2022年9月3日
ページを開いた途端ぶわっと溢れ出す南国の空気、生命力に満ちた植物の緑と澄んだ青い空、熱されて乾いた海の風の匂いがします。
外界から隔絶されたトロピカルな快楽の園「シャングリラ」はどことない仄暗さと背徳を孕み、その陰の部分をより際立たせるかのようにまばゆく蠱惑的。舞台設定と世界観にこれほど惚れ込んだ作品はありません。人物の肉体もその陰影のすべてが美しいです。男娼であるフィーの褐色の肌のその肌理の細やかさ、手に吸い付くようななめらかさまでひとつひとつの絵から伝わってきます。
男娼と試情夫との間の約束事が越えてはならない一線となることで、彼ら登場人物たちの行動に熱を与えて行くさまには読んでいて心が震えます。彼らの心身に課された制限が物語の官能性を増幅させていく。
この先を心より楽しみにしております。必読の一作品です。
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