雨降りvega
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雨降りvega

凪良ゆう/麻々原絵里依

もっと前に出会っていれば…

ネタバレ
2022年9月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ お互い心惹かれあいながらも、そしてお互いそれを知りながらも決して言葉にすることのない想い。同じ痛みを持っているのにそれを共有することもなく、それぞれが一人でじっとその痛みに耐えている、そんな印象の二人でした。世間体や常識、相手の気持ちや周りの人たちの気持ちに優先順位をつけ、結果全ての人たちを傷つけ一人で逃げてしまった新開を不誠実だと思う気持ちはありますが、そんなズルい大人が、立て掛けられた紺色の傘を見て子供のように泣くシーンがとても心に刺さりました。そして文人が河原でキーストラップを見つけて号泣するシーンも。作中には多くの小物たちが使われていました。紺色の傘、キーストラップ、キャラメル、万年筆。それらの小物たちが抑え込んだままの二人の感情を上手に引っ張り出してくれました。二人が答えを出すためには長い年月が必要だったし、まだ越えなければならないものもあるようですが、今度こそ幸せを掴み取ってほしいです。とても切なくてもどかしかったけど、数ある凪良作品の中でも一番好きな作品となりました。
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