親愛なるジーンへ 2(特装版)
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親愛なるジーンへ 2(特装版)

吾妻香夜

物語の中の愛と吾妻先生からの愛に感動…!

2022年9月17日
待ちに待った親愛なるジーンの2巻。1巻ではジーンの姿が回想シーンにしか現れないため、最悪「死エンド」も覚悟して読み始めたのでまずは「生きてて良かった〜!」と安堵!
改めて1巻から読み返して感じたのは、1巻では自分のルーツが分からず、育ての親家族との隔たり、ゲイであることで疎外感を感じていたトレヴァーが、純粋な魂を持つジーンに、私の神と言われて救われる過程を描いた救済物語だったということ。そのトレヴァーの気持ちは、手記の末尾に書いたメッセージとして1巻冒頭に登場しており、読み返したとき見事な構成に感服。
2巻は、蜜愛期を経て更に自分の可能性を確かめたいと思うジーンが、自分が家族と故郷を捨てたときの情景や気持ちと重ね合わせ苦しむ中、トレヴァーがジーンを赦し、ジーンが過去の自分を客観視して、自分を赦す過程を描いた1人の若者の成長物語であり、併せて吾妻先生の登場人物やBLの可能性に対する思いが詰め込まれているように感じました。
というのは、BLの切なさに子をなせず誰のルーツにもなれないことが挙げられるかと思うのだけれど、本作では、遺伝子を意味する名前を持つジーンが、トレヴァーの甥っ子の名前のルーツになり、更にダニーの子の名前のルーツに、そして後世の若者に、自由な生き方を選んだ存在として名前と共に承継されていく予感がするのです。
そんな風にその生き様を通じて魂の遺伝子を後世に伝えられる可能性が示され、そこに新しさを感じました。
BLらしくするのであれば、2人が唯一無二の存在として共依存して暮らしたり、再会愛に耽ったり、という描き方も可能だったと思うのです。でも、そうしなかった。本作では、愛しているからこそ、赦し、全てを受け入れ、聖母のように自分を受け入れてくれたジーンを包み込むようなトレヴァーの大きな愛が描かれていて、見え隠れする寂しさと切なさがないまぜになって胸を打つのです…。ラムスプリンガの情景でクロエが恋は素晴らしい呪いと呟いていたのと対をなす愛を描かれたのでは。そんな気がするのです。
読み返す中で、絵や構成含めた高い完成度に感服し、あわせてこれまでのBLの枠にとどまらない愛を描き、BLの新しい境地を広げた吾妻先生のお姿に、物語における愛と、先生のこの作品への愛、BLに対する愛を感じ、涙と感動が止まりませんでした。吾妻先生、素晴らしい作品と沢山の愛をありがとうございました!!
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