このレビューはネタバレを含みます▼
高校時代のトラウマから、恋愛に怖気付いて誰ともマトモな関係を築けなくなった(『嵐のあと』にも登場していた)美山と、そのトラウマの原因である初恋相手、仁科の二人の話。
レビューを読んでいると、高校時代に酷い言葉を投げかけ美山を傷つけた仁科の薄情さを指摘する声がちらほらあり、実際読んでみてもそれはもっともな批判だと言う他ないのですが、その一方で、美山から求められることを「幸せ」だと感じたこともあるにもかかわらず、「男同士」の関係を「どうせすぐに消えてなくなる泡のような」「未来のない」関係だと当時の仁科に思わせていたのが、彼の元々の保守性もあれど、一番は内面化されたホモフォビアであったことを思えば、言動の酷さが軽くなるわけではないけれど、理解できなくもないなと。
大人になって偶然再会し、高校時代の因果応報とでもいうかのように美山から何度キツく突き放されようとも、「今のお前を知りたい」と店に通い続け、美山の前に現れる仁科のある種の空気の読めなさと頑固さと馬鹿正直さが私的にはとても良かったです。(この仁科の一貫した頭の固さが受け入れられないと、なんだこいつとなるかもしれませんが。)
後半には『嵐のあと』の二人のお話も収録されており、開幕早々倦怠期感が漂う始まりに別れの危機かと思いきや、互いの胸の内を明かすことでしっかり堅実な愛を育んでおり、こちらも短いながら前作の本編よりも断然面白く、続きを読みたいと思わせる良質なラストでした。
本作で引っかかった点として、約10年前の作品だから仕方がないのかなと思いつつも、あとがきで「ホモ」という言葉が使われていたのと、高校時代の初体験時の美山の仁科に対する行為に若干無理強い感がありウッとなりましたが、書き下ろしの二人のおせっせがリバだったのには大変高まりました。短い描写ですが、リバが好きな人にはグッとくるのではないかと。