夜明けのリトルマーメイド【電子限定描き下ろし付き】
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夜明けのリトルマーメイド【電子限定描き下ろし付き】

上野ポテト

これはハッピーエンドと言うべきか

ネタバレ
2022年9月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ 非常に悩む作品です。おそらくそうであろうけれども、愛をパターンで身に刻む人と一緒になって、本当に末永く幸せでいられるのか。

【心(まこと)は少年のときに出会った信章がずっと気になっていた。高校、大学、社会人と、それぞれの時代に運命的な再会を果たすが、その度に信章への恋心は諦めようと思うばかりだった。そして心はついに決心するーー】

BLというか、人間を描く作品でした。この辺はさすが上野ポテト先生です。とくに今回は主人公の心ではなく、信章の人間性が主軸となって進んでいきます。

読めばわかりますが、信章は愛や恋、好意といった感情を持つことができずにいます。しかしそれに苦しんでいるというよりは、受け入れて愛や好意を表現するためにはどうすればよいかという『パターン』を学習しているようなのです。笑うべきところで笑い、泣くべきところで泣く。相手が自分に好意を向けていることを察し、こういうときには、とキスをして答え合わせをするような信章。これは最後まで変わりませんでした。

そんな信章に好意を持つ心。大学時代、キスは好意を返されたわけではないと気付いて離れたけど、数年後に再会したときにはやっぱり信章が好きでした。なんでしょうこの一途さは。少年の頃の出会いがずーっと澱のように心の心に留まっているのです。こうなるともう、やはり信章が運命の人なのだと思うしかないです。

信章は、心の前では本音を隠さないことと、優しさは持っている?ところは良かったです。パターンを覚えるのも優しさなんでしょうかね。行為の源は感情ではない、ということに、私は地味にショックを受けました。そして「こんな人と結婚したくないなぁ」と思ったので、やっぱりハッピーエンドじゃないよね(笑)
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