必要悪を認めざるをえないやり切れなさ





2022年9月29日
子供の為に購入しているので、紙版で18巻まで読みました。壮大な歴史ロマンにも似た大作だと思います。フィクションの小説が元になっているとはいえ、あまりに有名な作品なので、本家の内容と相違ある筋書きは絶対にNGのはずです。そんな風に制約のある中で、シャーロック・ホームズからモリアーティへとスポットライトを当て直した別視点からのストーリーが斬新で、犯罪卿・アイリーン=アドラー・ジェームス=ボンドなどの人物設定とストーリー展開などは、正にストーリーテラーと言えると思います。当時の貴族社会における社会の闇が想像以上に深く濃く、あまりの痛々しさ・無慈悲さに怒りを覚えるような場面もありました。歴史ロマンと言ったのは、階級社会から民主化への変遷を知る手がかりにもなるかなと思ったからです。物語の骨格とも言える《犯罪》ですが、一言で「完全悪」とは言い切れない複雑な事件・人間関係も見どころで、どう頑張っても《必要悪》を認めざるをえない、やり切れない気持ちにさせられ、深く考えさせられる作品です。中にはちょっと笑ってしまうようなウィットに富んだ軽い話もありますが、本質のテーマはかなり重く暗いと思います。歴史・文学・人間心理など色々と学びのある秀作ではないでしょうか。

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