にいちゃん
」のレビュー

にいちゃん

はらだ

名作な問題作。メリバの中のメリバ。

ネタバレ
2022年10月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ BL本の多くは、親もあっさり認めて周りも最初から祝福モードのものがほとんどだと思いますが、この作品こそ性的マイノリティのリアルに近いのかなって。
現実世界でも堂々と生活している人は多くいると思うけれど、深層心理的には祝福された恋愛でありたいし不安が普通より多いはず。
そして、親の立場だと他人がマイノリティであることには理解を示せるけど自分の子供はマジョリティであってほしいのはごく一般的なこと。親なのだからどんな我が子でも受け入れろっていうのは子育てしていない人間か、いわゆる普通のレールに普通に育っている定型的な子供を育てている人間の戯言のように思います。我が子が他人にされた過去の経験がきっかけにあったとしたら、本来は普通だったのだからまたきっかけがあれば戻るはずって期待し誘導してしまうのもまた心理としては仕方がない部分があり一様に責められないなという面もこの作品ではリアルに近い気がします。
ラスト、2人の閉じこもった世界の中では幸せかもしれないけど、同時に精神の破滅にお互いが作用しあっている共依存の状況は読者の心まで、出口の見えないトンネルを彷徨うなんとも胸がざわつく不安な気持ちに持って行かされました。
とても印象に残る素晴らしい作品です。

ただ、星が4つなのは、にいちゃんの過去の相手が行ったこと(これがまた、過去にいちゃんとその家族、自分の家族まで破滅に向かわせた本人なのに幸せに暮らしているのが後味悪い)、にいちゃん本人、行っていることはれっきとした犯罪ですよね。
たとえ、被害者側がs○xをすることをわかっててかつ了承していたとしても、その年齢の子供を唆し行為に至ることは犯罪だし、被害者が抱いた愛は本当に愛なのかというともはやわからない部分だなとすら思います。洗脳に近いのでは・・・とも。
どんな事情であれ犯罪はやはり肯定してはいけない、否定するべきだという考えを持っているので、そういった社会的倫理観の点で星を減らしました。
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