フリップ・フリップ・スローリー
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フリップ・フリップ・スローリー

オオタコマメ

地方と田舎と海と山、そして都会

ネタバレ
2022年10月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 図書館司書補佐の荻原(23)×大学客員助教授の受け八月一日尋一(34)。
閉鎖的な田舎に生まれ育った受けは、「予期せぬ第三者による同級生へのカミングアウト」、そして生じてしまった「父親との確執」で高校時代に深く傷ついた。卒業後、大学のために上京して以降、自由な生活を満喫していたが、確執があった父が荼毘に付された事を切欠に地元に帰って来た。反して攻めは、そんな受けの通勤ルートにあるバス停近くの図書館に勤務していて、受けが暇潰しにと本を借りるために図書カードを作ったことで出会った。
攻めもまたゲイであったからか、何となく受けの空気に同類であることに気づく。そして頻繁に図書館に現れ、苗字以外にも貸出に特徴がある受けに対して、攻めは受けの容赦や少し抜けてる性格に徐々に惹かれていく。ある日、攻めのドライブ好きが高じて、2人は海辺にドライブに行くことになるのだがーー……

田舎あるあるを題材にしたお話なんですが、あるあるすぎて…心理描写、作画はもう満足すぎて、だから尚更胸が苦しくなりました。荻原くんのご両親と、尋一さんのご両親は対照的で、これは世代と云うよりはご両親の人となりの違いなんだろうなと思った。でも、自分の意思に反したタイミングでのゲイバレによってモロ典型的な父親に飲み物ぶっかけられるの、タイミングや歳とか、そういうのが自分で選べればここまで確執が生まれなかったかもしれないな…尋一の父親との思い出シーンを見て、とても大切に育てられたんだろうと感じた。だからこそ、最悪な展開によるゲイバレでお互い心に傷がついたんだと思う。田舎で悪くなった印象を元通りにするって本当にホネが折れる。噂に尾ひれがつきまくって、どんどん盛られて、話のネタにされてそれが結束力に繋がってく。他人の家の事情も知りつくし、自分達が気にくわなきゃ束で潰しにかかってくる。あるある過ぎて胸がザワザワしました。だからこそ、尋一の田舎への嫌悪感からくる荻原への壁。大人だからこそやってのける優しさを纏った拒絶に、わかるわ…ってなった。でも荻原が負けなかったことで、良い方向になったのは本当によかった。恐らく同棲は無し、電車とバスで1.5時間のミニ遠距離だけど、ドライブ好きと片や若葉マークで運転練習しなきゃな2人なら、その時間もあっという間かな。図書館でも会えるし。
本当に良いお話見せてもらえました。ありがたい。
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