憂いを携えた幸せもまた良いものだと思う





2022年10月16日
ポルノグラファーシリーズ最終作。(物語軸としては本作より前に描かれた静雄のスピンオフ『アケミちゃん』が後。)私としてはインディゴが最高ではあったけど、トータルで素晴らしいシリーズだった。本作は、初めて読んだ時は冷や冷やした。幸せを壊しにかからずにはいられない小説家の性。一生懸命追いかける年下の彼がまた本当に真っ当で純粋な青年だけに、この先生でなければ誰かと穏やかな未来が築けただろうと思うと、要らぬ苦労に自ら嵌まり込んでるようで。でも、お互い自分に無いものに惹かれ合い、似た者同士で理解し合うというよりは、相手の世界を尊重しながら、良いところだけでなくダメなところも含めて愛おしむ生き方を選んだんだろう。再読すると、序盤中盤のワチャワチャには相変わらず疲れたけれど、ラストにかけて、シリーズトータルで描かれてきた、憂いを仄かに含んだ幸せを、落ち着いて味わうことができた。このシリーズ第一作がデビュー作とは、作家さん本当に恐るべし。心から拍手を送りたい。

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サムゲタン さん
(女性/20代) 総レビュー数:8件