このレビューはネタバレを含みます▼
子爵 須蛾聡×執事 ドイツ人 コンラート・ネルンスト
グラン・ギニョールとはフランス、パリに19世紀末から20世紀半ばまで存在した大衆芝居・見世物小屋のグラン・ギニョール劇場のこと。またそこから転じて、同座や類似の劇場で演じられた「荒唐無稽な」、「血なまぐさい」、あるいは「こけおどしめいた」芝居のことをいうそうです。
本仁先生は作中で「悪趣味な痴態」「残酷な演技」という言葉にグラン・ギニョールとルビを振っています。
須蛾子爵はドイツで通訳のコンラートと知り合い、日本に連れ帰り、執事にします。男妾を連れ帰ったと須蛾とコンラートは激しい非難と嘲笑を浴びますが、2人の間には性的な接触はなく、コンラートは触れあうことを耐えることが愛の深さと信じてやり過ごします。
耽美というか、最初は屈折しているけれどこれが至高の愛の表現とされているのだろうと思っていましたが、最後まで読んで須蛾の性的嗜好の拗れっぷりに嘆息しました。いや、スゴかったです。読む人を選ぶというか、頭の中の地雷を全部取っ払って読まねばならないのではないでしょうか。
あとがきに「あと4話で完結」で「大どんでん返しの最終話」があるけれど「大人の事情がイッパイ」で2巻目が出せないとあり、続編を熱望しております。大どんでん返しとは?「ロマンティック」のその後はあったのか?須蛾が本懐を遂げずに健やかな方向に行ってもらいたいのですが、どうなのでしょうか。個人的にはコンラートが気の毒でならないのでなんとか彼だけでも助かってもらいたいのですが。
登場人物に阿木乃男爵、白川伯爵など爵位がついていましたが、身分の高い順に公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵です。
2巻の構想ありとのことですが、こちらだけでも完結しているものとして読めます。ページをめくるとグラン・ギニョールの開幕です。醜悪で美しい世界へようこそ。
2016年8月 総196ページ 修正は白抜き