このレビューはネタバレを含みます▼
どこかずっと読むことを敬遠してきました。
しかし、ついに好奇心が勝り手に取りました。
この物語は日本のリアリティだと思います。
BLはご都合主義の展開が多くて、主人公や関係者の親族が大体本人の意思を尊重して暖かく見守ってくれる作品ばかり。
だから大体安心して読めるものだが、現実はそう簡単にはいかず、パターンとしては本人が本心を隠して苦しむか、バレて仲違いしたり疎遠になるか…だろう。
この作品に当てはめると、前者はゆいだ。
にいちゃん(以下景)は後者ならまだ良かったのだが、まさかの親からお前は病気だと言われてしまい、治療が必要だと強制的に女の肌に触れさせるよう仕向けられる。
この作品に出てくる景の親は、景に対して過度な干渉をし過ぎだ。そのせいで彼は苦しみ、壊れる直前まで追い詰められる。
『普通』とはなんなのだろう。1番多いと、それが『普通』になるのだろうか?
そして自分がその『普通』と同じだったら、他の人も当然そうでなくてはならないし、もし違う人が出てきたらそれを批判したり矯正したりするというのか?
民主主義・団体主義の日本では余計その色が根強い。みんなと同じでなければならない。同じでなければおかしい、と。いまだに同性婚が認められないところからもその気配が窺える。
もし世界が変わって、自分が『普通』とは違って、今まで好いていたものを否定された時に、自分がどうなるか、想像できるだろうか?
この物語のゆいや景、そして我々はそんな世界で今日も生きているのだ。
BLをお読みの皆さん、美化されたフィクションとしてならBLを美味しくいただいていけると思いますが、現実的に目の前で同性愛が発生したら、穏やかな目で見守ってあげられると断言できますか?良かったら少し、考えてみてください。
この物語の結末、彼らが幸せになれるかどうかは、本人たちの気持ちと、世間の目=日本の風潮が変わるかどうかに委ねられていると読み解いたのは私だけかもしれませんが、日本がもっと『自由』に変わり、2人には幸せになってほしいと願うばかりです。