僕の先輩
」のレビュー

僕の先輩

羽生山へび子

おもしろ切ない

ネタバレ
2012年4月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「僕の『先輩』」と「『僕の』先輩」だとだいぶ印象が違うけど、このタイトルはどっちの意味だろう。


予測不可能なタイミングで次々と繰り出されるジャブのようなはじめのボケと、先輩のボケスルー(時々カウンターパンチ)っぷりが絶妙。
言葉の選び方もハイセンス。
日頃だらけている腹筋がだいぶ鍛えられた……ような気がします。(希望的観測)

あまりにも頻繁にジャブが入るのでギャグ漫画のようにも見えますが、本筋は意外と真面目です。
真面目に恋愛してます。

先輩、二宮三郎なんてちょう適当な名前だけどカッコイイ。
サンプルから受ける印象とはちょっと違って、はじめに真摯に向き合ってるのがいい。
はじめも一途で可愛い。先輩大好きすぎて暴走してるようでいて案外健気な一面も。
あとちんころってあだ名が素晴らしい。
どっから出てきた。


正直なところ時代を20年くらい逆行したような絵柄にはだいぶ抵抗があったのですが、読み終わる頃には気にならなくなっていました。
というよりもこのお話はこの絵柄だからこそ生きるんだろうなあ……

ラックを逆さまにしただけのタコ焼き屋の簡易ベンチ。
アパートの窓の下に取り付けられた室外機。
土手を走るママチャリ……、何ともレトロな田舎の風景は人物に負けないくらいの存在感。
花開いた桜の木から俯瞰した構図なんかは上手いな、と思いました。
作者さんの書きたい映像がはっきりしているのが分かる。

先輩の体のラインも程よく筋肉質でかっこいい。
はじめが先輩に担がれるシーンはお気に入りです。
魅せる「画」を描かれる作家さんだと思いました。


ただ、どうしてもこの絵柄が受け付けない、垢抜けない雰囲気が好きじゃない、という人は必ずいると思います。
淡々としていて終盤になるまで山場もなく(ギャグ部分はハイトーンですが)、どこで盛り上がったらいいのか分からないという人もいるでしょう。

高評価に躍らされず、試しに一話ずつ買ってみるのもいいかもしれません。

私はこのお話、大好きになりました。
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