こちらから入れましょうか?…アレを
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こちらから入れましょうか?…アレを

松田環

レビュー枠1000文字に収まりきらない

ネタバレ
2022年11月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 登場人物の言動・行動に終始ハラハラドキドキさせられる漫画。「こんなのおかしい、間違ってる」そう思いながらも決して読むことを止めさせてくれなかった漫画。口の中一杯に広がる苦さの後に、頭からつま先まで突き抜けるような爽やかな読後感を与えてくれる漫画。自分は結婚なんて一生縁無いんだろうなと思っていた私のような陰キャですらも「結婚っていいな」と思わせてくれる漫画。とってもとっても素敵な漫画です。松田先生、こんな素晴らしい作品を世に出してくださり本当にありがとうございました。←ここまで入りの挨拶。「言葉だけじゃ人はわかり合えない」っていう話をよく聞くことがありますが、それはわかり合うために言葉を尽くした人だけが言えることですよね。でも、その「言葉を尽くす」ということが本当に難しい。優が敦に対し過去の経験の多さを正直に話すことが出来なかった気持ち、よくわかります。敦が優に対しEDになってしまったコンプレックスの真相を話すことが出来なかった気持ち、すごくよくわかります。そして、敦が優に対し自分のアブノーマルな性癖の目覚めを正直に話すことが出来なかった気持ち、すごくすごくよくわかります(私は未経験ですが…)。お互いがお互いを想うからこそ、嫌われたくない・傷つけたくない、そう考えてしまい全てをさらけ出すことが出来ない。すごくすごくすーっごくわかります。でもそれって、本当に、ほんとーーーに相手を気遣った結果なんでしょうか?気遣いという美辞麗句を、自分の中にある後ろめたさの隠れ蓑に使ってませんか?本当の意味で相手のことを想い、気遣った結果だと胸を張って言えますか?この作品は、人間なら誰にでもあるそんなミスコミュニケーションに端を発した過去と今、二つのすれ違いの物語が主題です。登場人物一人一人の気持ちが真に迫ったもので痛いほどよくわかる。でもその気持ちのせいで関わる人を互いに傷つけ合ってしまう。心理学用語で言う「ヤマアラシのジレンマ」の典型例ですね。だからこそ、(最後は力技での決着になってしまった感があることだけは残念ですが)作中で積み重ねられてきたフラストレーションが解放されたときのカタルシスは言葉であらわすことが出来ないほどに素晴らしいものでした。出来ることなら松田先生から一話ずつこういう展開・台詞回しにした意図を細かくお伺いしたいです。ああもうまだ1/10も書けてないよもっと語りたいよ!
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