おナスにのって
」のレビュー

おナスにのって

岩田 ユキ

救済

ネタバレ
2022年11月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ フォローさまのレビューで知った作品です。
37ページの短編。
「ひとつ積んでは母のため」
罪となることを何一つしなかったのに逆恩の咎で賽の河原で18年も苦行している主人公のお話です。
1年に一度、お盆の時期に一時帰省できる亡者に初めて選ばれた主人公。母を喜ばせたい、ほんの少しだけそばにいたいという純粋無垢な気持ち。
そして迎えに来た精霊馬はナスだった……という所までが試し読みです。

ここまでだけでも、主人公が謂れのない不幸の上によりにも寄ってナスとか!亡き人に早く会いたいと願って作るキュウリの馬じゃないなんて!無垢な魂をいたぶって何を得るお話なんだろう?と、受け取る準備に少し時間をかけました。
………
本編を読み終えて胸に残る痛みと柔らかさは、試し読んだ段階で想像したものとは全く違っていました。
地獄に在りながらも保ち続けた無垢な魂の、唯一「負」の感情である「寂しさ」。
現世に在りながら「良く生きる」ことができず執着の果てに鬼のようにすらなってしまう愚かさ。
過去の過ちを無かった事にして明るい未来を歩こうとする傲慢さ。
3つの魂が触れ合った時、良くも悪くも因果応報の裁きが下されたように思いました。
母としての愛は得られなかったものの心の底からの言葉で救われた子。
長年の憑き物が落ちてやっと違う人生を生きられるだろうと予測される母。
まあ父はこの機会に猛省したらイイよ。
………
純粋な魂であるからこそ子が純粋に母を慕う気持ち。
「要らない命」なんて無いのだということ。
救いは誰に対しても用意されているということ。
というか用意されていたらいいのに、と強く願ってしまいました。

リリースされたのが今年のお盆なのですね。
来年またお盆に再読して亡き人への思いを噛み締めたいと思います。
失くなった命はどの命もかけがえのない有り難く尊い命だったのだと。
いいねしたユーザ17人
レビューをシェアしよう!