幾千の夜
」のレビュー

幾千の夜

木下けい子

真っ直ぐ過ぎてキリキリ痛い幼馴染の恋

ネタバレ
2022年11月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ てっちゃんはお隣に住む年下の宙のことを可愛く、また可哀想に思っています。仕事ばかりの父親がしょっちゅう宙を殴っているからです。勉強が苦手で年齢よりも幼い宙は、小さい時からてっちゃんのことが大好きでずっと一緒にいたいと思っています。てっちゃんもそう思っていたのですが、年上のてっちゃんは自分の気持ちに欲望が含まれていることに気づき、宙と距離を置くようになり大学生になると家を出て行ってしまうのでした。中学生だった宙も高校生になり、バイト先の先輩にてっちゃんの面影を見出して懐くのですが、その先輩に迫られてショックを受けます。優しくしてくれるのなら誰でもいいんじゃない、てっちゃんがいいんだと公衆電話から泣きながらてっちゃんに電話する宙の姿が切ないです。暴力を振るう父親から宙を守りたいという想いから宙の全てを自分で守ろうとするてっちゃんと、てっちゃんの側にいたいから自力で頑張ろうとする宙は、お互いが大切過ぎて上手く噛み合わなくなってゆきます。二人の紆余曲折の10年間は、独善的だったり空回りしたりの思春期の痛々しさに溢れていて、作者様ならではの世界が広がります。宙の親友•リョーちんがいいヤツで宙は良かったなぁとしみじみ思いました。
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