500年の営み
」のレビュー

500年の営み

山中ヒコ

ああ…これは余韻がすごい

ネタバレ
2022年11月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 半額のときに買ったまま重そうなので寝かせてました。いやあ…いい作品でしたわ。最初は、恋人が死んだってニュースで聞いたら死体も確認せずに飛び降りるか?とか、設定のツッコミどころが色々気になって入り込めないまま終わるのかと思いきや、いつの間にかそんなのどうでもよくなって入り込んでいて、さらにこれはヒカルBもだけど寅の成長物語でもあるのだと気付いたときに感動しました。最初は死の一報を聞いただけで自死を選ぶような人間だった寅が、250年後、さらに250年後と営むたびに優しく強くなっていくのがその描写でわかり、ツッコミどころにも意味があったのだと自分の浅慮に反省。きっと500年後の寅は、ヒカルBの現存確率が0%って言われたって筋トレして尾瀬に向かったのではないでしょうか。250年後のさいご、涙の本当の意味を知ったヒカルBが、寅を膝に抱いて砂漠の夜空を見上げた顔つきがもはや人間の表情で、うまいなあと。死んでしまった恋人太田光についても、彼がいて、彼が尾瀬に行こうと約束してくれたから最後にヒカルBと再会できたわけで、全てが繋がっていて、でも光の代用ではなくヒカルBを愛していて、優しい太田光もそれをきっと「良かったね」って思っていると確信できて、重いようで、優しいお話だと思いました。でも、ヒカルAはどうなったのだろうかとか、人間至上過ぎやしないかとか、寓話を読んだときのような、余白部分について考えてしまう部分もあって、いくらでも考える余地のある、受け手次第ではどうとでも読後感が変わりそうなお話だなあとも思いました。
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