ロスタイムに餞を
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ロスタイムに餞を

ココミ

素敵なタイトルに乾杯(完敗)!

ネタバレ
2022年11月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 成る程。これは染みますねぇ。
同性異性に関わらず、他人とひとつ屋根の下に暮らした経験の有る方は、大なり小なり出る不満。

最初は些細な事だった。
しかし少しずつ降り積もってゆく不満。
いつしか 好きが嫌いに変わる瞬間が切なかったです。

喧嘩をしたらHに雪崩れ込む桐生の行為は悪手。
小説家ならば言葉は無限にあるだろうに、行動で分かって欲しいと言うのは不器用過ぎて甘え過ぎ。

それに対して尽は我慢をし過ぎる、圧倒的に言葉が足りない。

つまりコミュニケーションが足りない2人。
うーん、過去身に覚えが有りますね。

恋から冷めた(様に見える)尽と、気付かぬ振りして引き留めようと頑張る桐生の行方が気になって仕方ない。

正直…………
萌えましたよ!
そんな2人のぎこちないエッチ
最ッ高じゃ無いですか?
何でも無い振りしながら、頑張って上に乗って煽る桐生と、もう恋を終わらせたいのに抗えない尽とか…もぅもぅ。
背徳感?罪悪感?
別れた筈の「受け」がオフェンスして「攻め」がディフェンス?
心はチクチクするんで申し訳無いんですけど、はぁー堪らん!
お互い冷静な顔しながら、感じてるのとか、はぁー堪らん!

もう読み込んでいくと、明らかに尽は未練タラタラなんですよ。
でも譲歩したら負け、の気持ちも痛いほど分かるんです。
そう、ココで許したら何も変わらない。
さぁどうなる?どうする、尽?
電車のシーン「やり直そう、そう言ってくれたらヨリが戻るのに」に

はいっ決まった!ホイッスル…ん?
いやいや、まだ終わらない。まだ、桐生君分かってない。
違います、本当のゴールはあの場面です。読んだ方はお分かりですね?
「かえって…きて…」は笛「ピーーーーー!!」が頭の中で鳴り響きましたよ。
終了ー。良かったねぇ。
2人と握手したいです。
諦めたらそこで試合終了だよね?いや試合じゃないけど!
良く諦めなかった!頑張りました!
それまでの歪な空気が甘い香りに変化。

我々読者も大なり小なり経験が有るからこそ、普遍的に感情移入しやすく共感も持てる。

2人はとうとう同じ歩幅で歩き出しました。
「歩」くとは、「少」し「止」まると書きます。彼らには少し止まる時間が必要だったのですね。
まさにロスタイムに餞を。素敵なタイトルに乾杯(完敗)。
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