このレビューはネタバレを含みます▼
レビューを書くのに悩んだ作品。西田ヒガシ先生が最後の作品になるかも…と考えて渾身込めた作品で、肌身離さずに持参しているという、クンデラの「不滅」のオマージュ感がある。「不滅」も「存在の耐えられない軽さ」の引用もあり、交差する思いが紡がれる。
ロマンティック【romantic】は辞書をひけば、「現実を離れ、情緒的で甘美なさま。また、そのような事柄を好むさま。空想的。」とされる。この作品はクンデラのように時空を超え、「普通」を越えてまさに空想的であり、情緒的。性と死が直結しながら、ハッピーエンドのために死を望み、生きるためにたった1人の誰かに必要とされたかった男たちの物語。
クンデラがプラハの春を経験し作品に色濃く反映したよう、参考文献にはシリアの内戦を用いた戦場にある日常を描き、非日常ではない日々の選択と意味を考えさせる。ゲイであること、子どもを産めないことの切なさ、ストレートだけど必要とされることを選択した深層心理。ジョンの見栄えの退行と、先生のジョン限定に発動される念力。ファンタジーなのに、なぜかあり得ると思わせる描写。最後は、ある意味でメリバであり、ジョンが望んだ通り戦場で死ねたのではと思えるものと、亡命が許可されて生きたのではないかと、読み手が想像の中で終わらせることができる。文学的で映画的なBLに収まらない作品ではないかと感じる。秀逸。