ちーちゃんはちょっと足りない
」のレビュー

ちーちゃんはちょっと足りない

阿部共実

読後も考えずにいられない作品

ネタバレ
2022年12月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ すごい作品を読んだ後に来る、「読後も考えずにいられない…」という感覚が、この作品にもありました。
自分が感じた気持ちを他の誰かも感じていないか気になって、考察や感想を検索する手が止まりません。

ただ、ナツへの言及はよく見るのですが、個人的には旭の方が胸に引っかかり続けます。
知性、品性、倫理観、豊かな家庭、恋人…と、明らかに満ち足りた存在として描かれている旭。ただ、無意識に配慮が足りないように見えます。
特に友達がオシャレしてたことを、疑う場面でだけ言及するのがナチュラルに残酷だなぁと…。
旭は何も間違っていないし、最後の一件で多くを学び、新たな友人も獲得したけど、ナツに対してどれだけ残酷なことをしたか自覚がないまま、豊かな大人へと成長していくことが、ものすごくモヤッとするんですよね…。

旭の強さや正しさは間違いなく美徳だけど、それによって誰かを傷つけることへの無自覚な配慮のなさが、すごく傲慢で残酷なものに見えるのです。

あと、ちーを保護対象としてあれだけ執着していたにも関わらず、ナツからの意味深な電話にあまり食い下がらずアッサリ終わらせたことも、気になる点。自分よりうまくちーを導いた藤岡を見て、何か思うところがあったのかな?

ちなみに誰からも羨ましがられない自分を嘆くナツですが、個人的には(穏やかで無いコンプレックスまみれの内面は置いておき)柔和で他者を脅かさない穏やかな雰囲気は、実はすごく素敵で羨ましいものなんですけどね…。(ただ中学生の内には自他共に気づきにくい魅力なのもわかります)
ちゃんとナツが人と向き合って行動して成長することができていれば、素敵な女性になっていただろうに。彼女に導きの手を差し伸べてくれる大人が現れることを切に願います。
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