古都こと―ユキチのこと―
」のレビュー

古都こと―ユキチのこと―

今井大輔

視点切り替え恋愛譚

ネタバレ
2022年12月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ レーベルも出版社もジャンルさえ違って出版された2つの「古都こと」は、ユキチ視点とチヒロ視点それぞれで描かれたひとつの恋愛話です。
どちらから読んでもいいし、片方だけ読んでもいいのですが、私は両方を読んでみて先にチヒロ編を読んで正解だったと思いました。(あと1巻ずつ交互に読むのも有りかもです。)(チヒロ編は読みホで読めます。)

両方ともを読む面白さは、お互いがお互いに抱く姿がおかしいくらい本人像と全く違うということが一つです。それも巻数が進む毎に本来の姿に近づいて行くのが恋の成就に近づいて行くのとシンクロしていきます。幸せを勝ち取るために弱い自分を守るための武装を捨て素直になる下りが良かったです。

そして2つの物語を読んで一番残ったことは、同じ言葉がお互いの中でこんなにも違う意味と重さになるんだと実感できた事です。
常々思っているのですが、自分の言葉は発した時点では自分のモノですが、相手が受け取った時点で受け取った人のモノになる。それは受け取った側の境遇や性格、その日の気分で変化するし、発した側の意図と真逆に伝わってしまう時もあります。
すれ違いの恋愛話は数多く読みましたが、本作品のように男性視点に強く共感した作品はあまり多くありません。と言うか、女性に(当て馬も含めて)リアリティを感じなかったからかも知れません。

それと恋愛は2人でするモノなのか、片恋を続ける意味はあるのか、その決着や折り合いはどうつけて行くのか?等々を興味深く読みました。
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