悪夢のように幸せな
」のレビュー

悪夢のように幸せな

宮緒葵/ミキライカ

お姫様の思い通り

ネタバレ
2022年12月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 宮緒葵先生といえば、受けに対して異次元レベルの執着を見せる攻めが味わえますよね。国民的俳優の達幸と大型犬に愛されし明良が登場する渇仰はまさにソレ。レビュー書いてますが、紙媒体で発売当時、たまげたものです。執着の域を越えて、人間らしさも手放して猛獣・畜生の縄張りを遠巻きに見てるかのような異質さ、そして縄張りの中で行われてる求愛行動に呆然としながら見ることしか出来ないあの衝撃たるや…と、しばらく取りつかれたように何度も読み返したあの頃。

他レーベルから引き上げての再出版となる「悪夢のように幸せな」は、三角関係なんですが柊慈(しゅうじ)が圧倒的すぎて…これはレビュー見ないで行った方がより恐ろしさを感じられるんですが、先生がわかりやすいヒントを最初からくれるのでわかる人はわかる…というか、第三者の目線で予めマーキングしてくれてるというか。
空っぽのまま生きてきた柊慈の心に射し込んだ天使のような受…自分の心を掴んだのだから責任をとれって理論、確実に悪党だし、本来の悪党である功(こう)の方が余程まともに見える…が、先生あとがきで功を幸せにする気がなさすぎて酷ぇってリアルに思った。
いやもう、功どころか組の皆さんの方も被害者すぎて。これから仕事上、どうするんだろう…

読了後、残った気持ちとしては柊慈が完全なる勝者で受が勝者の供物すぎて最後は逆に柊慈に受に関する記憶を消されちまったかのような強烈さと、実直すぎて全部裏目に出すぎて哀れすぎて見てられないよ功…の2本です。最後は受けが可哀想って気持ちが霧散される不思議…堕ちたから、という理由ではなく…手の施しようがないくらいに自分から食べられたから、というか。兎に角、柊慈の一人勝ち。
ホラーといえばホラーなんでしょうが、合間合間に出てくる第三者の視点が、まさに「引き換えすらな今だよ」って言ってるようにも思えてきたぞ…

好き嫌いわかれると思いますが、萌えよりかは「よくぞここまで不気味に書いてくれたな(褒め言葉)」という衝撃で、いま正にこれを書いています。萌える萌えないの次元ではなく、衝撃を与えてくれるからこそ次回作も楽しみにしています!って気持ちになりました…
籠の中の鳥を、猫がずっと見下ろしてるかのような緊張感が味わいたい方、是非見てください。

捧げられた供物はきっとずーっと口や手や胃の中で愛でられるんだな…という激重話が味わえますよ
いいねしたユーザ7人
レビューをシェアしよう!