このレビューはネタバレを含みます▼
秀作です。是非読んでください。
「…お前こそ、人間のことがわかってない。人間は、ロボットだろうが、使用済みの切手だろうが、犬だろうが、金魚だろうが、好きな奴のためにはこうしてしまうものなんだ」
… ヒカルは、寅雄の亡くなった恋人に似せたアンドロイド。でも、恋人には似ても似つかぬ、半端な性能しか持ち合わさない。寅雄は随分不満だけれど、どんな時も側にいて、不器用ながらも心から尽くし、「好きだよ」と囁いてくれた…
思いがけぬ突然の別れから、寅雄は、ヒカルの存在がもはやかつての恋人の代わりではないこと、かけがえのないものであると気づき、現れた恋人そっくりの高性能アンドロイドではなく、捨てられたヒカルを探しに旅に出る…そんな、お話。
何度も、手に入れたと思ったら消えてしまう愛の前に、寅雄の孤独がどうにも切なすぎる。それ故に、たとえアンドロイドであると知っていても、自分のなかに芽生えた愛に縋った寅雄の姿に強く胸を打たれます。