500年の営み
」のレビュー

500年の営み

山中ヒコ

アンドロイドと紡ぐ、普遍の愛。

ネタバレ
2023年1月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 秀作です。是非読んでください。

「…お前こそ、人間のことがわかってない。人間は、ロボットだろうが、使用済みの切手だろうが、犬だろうが、金魚だろうが、好きな奴のためにはこうしてしまうものなんだ」

… ヒカルは、寅雄の亡くなった恋人に似せたアンドロイド。でも、恋人には似ても似つかぬ、半端な性能しか持ち合わさない。寅雄は随分不満だけれど、どんな時も側にいて、不器用ながらも心から尽くし、「好きだよ」と囁いてくれた…
思いがけぬ突然の別れから、寅雄は、ヒカルの存在がもはやかつての恋人の代わりではないこと、かけがえのないものであると気づき、現れた恋人そっくりの高性能アンドロイドではなく、捨てられたヒカルを探しに旅に出る…そんな、お話。

何度も、手に入れたと思ったら消えてしまう愛の前に、寅雄の孤独がどうにも切なすぎる。それ故に、たとえアンドロイドであると知っていても、自分のなかに芽生えた愛に縋った寅雄の姿に強く胸を打たれます。
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