進撃の巨人
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進撃の巨人

諫山創

親子関係をも描いた作品と知って

ネタバレ
2023年1月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作品自体は知っていて無料版が公開されている間に読んだこともあるものの、エレン母が巨人に食されてしまうシーンで挫折…不条理、グロが日常に溢れる中、何も漫画でまで…と。が、フォローしている方が母親目線で書かれたレビューを読み、自分こそこの作品を読まなければならないように思ったのです。なぜなら仕事をしながら2人の子を保育園に預け、子どもの将来が不安で通塾、中学受験させた挙句、一方は勝組と言われるルートに乗ったものの、他方は優秀な子たちに囲まれ逆効果に働いた経験のある身には他人事に思えなかったからです。

親子関係目線で読めると分かっていたためか、驚くほどスイスイ読めました。感じたのはエルディア人という同じ民族が、島の中で塀に閉ざされ自由を希求しながらも仲間として助けあっている姿と、マーレ人の中で悪魔の血が流れていると蔑まれ、エルディア人であるのにパラディ島内の同族は悪魔と同じで殺戮して良しとされ、名誉マーレ人になるために巨人後継者を目指しても結局マーレ人に利用されるだけの姿を見て、優生思想や洗脳教育の恐ろしさ、そして歴史は権力者によって作り変えられ得ることを斬新な設定と魅力的なキャラで伝えてくれた作品なのかなという事。親子関係という観点では、やはりマーレの収容区内で育ったライナーが、その母が息子個人の幸福よりマーレ第一主義の自分にとって役に立つかどうかを見ているのに、その母のため一生懸命訓練に励み腕章を見せる姿が不憫で仕方がなくて。自分の中では洗脳教育を受けながらスパイのように過ごし、自己矛盾と闘うライナーが副主人公でした。その後、幾多の困難を乗り越え、両方のエルディア人を呪縛から解き放つ為に戦うライナーを見て、彼は自分で思考した結果、自由と自分を取り戻したのだなと。その姿は不憫な目に合わせてしまった我が子の将来の姿に重なりました。ライナーの母が本心から最後はいてさえくれればいい、と帰還した彼を抱きしめたシーン。これはあるべき自分の姿だと。子の幸せを願い与えられた情報の中から手探りで善かれと思ったことをしてきて、結局失敗することもある。今もその子の自己評価の低さは強いけど、丸ごと受け入れて愛情を示すしかない。最初から完璧な母親なんていない。けどどうか自分を責めないで。子の為と思ってした事はいずれ伝わると思うから。レビューにより通読できました。感謝です。
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