かわいそうなひと 分冊版
」のレビュー

かわいそうなひと 分冊版

勇の字

痛く辛いが、希望は捨てたくない。

ネタバレ
2023年1月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「同居人シンドローム」に登場する響の、高校時代の悪夢のような(というよりまんま悪夢の)お話。
じわじわと確実に響を追い詰める朔は完全にサイコパスで、響の自我が崩壊すればするほど狂気歓喜するタイプ。
追い詰められた響は無気力・思考停止に陥っていくけれど、「同居人シンドローム」の響に繋がるのだから、きっと心理的な破壊を経た後の再生の物語なのだと信じたい。
10代の若者が、というか、一人の人間が背負うにはあまりにも大きすぎる苦しみを響に与える朔には心底虫唾が走る。
本当に、吐き気を催すほど最悪な人間。
この不快感と、残酷すぎる現実に何とか立ち向かう響の孤独な戦いっぷりを、これほど文学的に抒情的に描き上げる作者様の力量に脱帽。
響が朔に打ち勝って、悪夢から解放される日が楽しみです。「かわいそうな人」は、どうか朔のことであって欲しい。
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