俺の花婿はお前じゃない
」のレビュー

俺の花婿はお前じゃない

ミナモトカズキ

どこをゴールにするかで評価が分かれる作品

ネタバレ
2023年1月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙に惹かれて購入しました。正直1回目読んだ時はそこまでハマらなかったのですが、2回目、3回目と読む度にじわじわきて、なるほど!と良さがすごいわかりました。

生まれ持った運命を受け入れて生きていた渉が出会ったのは、お見合い相手の兄正宗。渉の言動に胡散臭さを感じ、すぐさまゲイであることを見破ります。楽にいい人生を送るため、運命に逆らわずに生きようとする渉と、本能に従って自分の人生を生きた方がいいと諭す正宗。ハッキリと自分の考えを述べ、渉自身を見て向き合おうとしてくれる正宗に反発しながらも惹かれていく渉が愛しいです。そして正宗がちょっと変わってるというか、渉がどんなに正宗の上をいこうと足掻いても、真面目に正論言ってきたり、逆に甘々なのが返ってきたり、どんな変化球も捕ってくるのが面白い笑。自分がこうあるべきだと思ってきたことを、平気で覆してくれるのが気持ちが良かったです。いつの間にかお互い大好きになっているのも、当たり前のように2人の未来を考えているのも、心が温かくなりました。

決してほのぼのした感じではありません。ありのままのその人を受け入れようとする考え(正宗一家)と、常に体裁を気にして、「普通」であることを求め、はみ出すことを許さない考え(渉一家)がストーリーの裏側で働いています。渉のように生きている人はきっと多いことでしょう…。自分の気持ちに正直に生きれる人が増えますようにと願わずにいられません。だからこそ、あの渉が大きな一歩を踏み出したことを価値付けるのか、自由を掴み取ることを求めるかで評価が分かれると思います。個人的には、渉が家族とどう向き合って、どう闘っていくのかが見たかったですね。すぐには解決しないことでしょう。それでも、全てをなくしたとしてもどうしてもこの人と生きたいと、「普通」であらなければならないことのおかしさと、自分の生き方の自由を、渉自身によって証明してほしかったと言うのが本音です。

今まで諦めてきた渉や渉のような人が、堂々と好きな人の隣にいる人生を掴みとっていけますように…。深く考えさせられたステキな作品でした。
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