シャングリラの鳥Ⅲ【分冊版】
」のレビュー

シャングリラの鳥Ⅲ【分冊版】

座裏屋蘭丸

文化も制度も時代も超越した神作品の神回

ネタバレ
2023年2月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 毎回、単話買いをしては、その没入感に圧倒される座裏屋先生の神がかり的な絵や構図の上手さと独自の設定が群を抜いて素晴らしいシャングリラの鳥。特に今回のACT18は、ついに、あのアポロがフィーに欲情して、3つの禁のうち、一つを破ってしまい、独占欲すら隠せなくなってしまって…来た、ついにこの時が来たー!と思ったのもつかの間、その感情がなんなのか、名前をつけてしまったら、さらに禁を破ってしまう…という思いからか、アポロはその感情に名前をつけられない。
そんなアポロに仕事で抱かれるのとは明らかに違う反応をしてしまうフィーの色っぽさよ…ふー、自分を落ち着かせなければ吐血しかねない圧倒的なエロス…座裏屋先生を拝むしかない神回でした。
そして、今回改めて気づかされたのが、アポロが自分の思いを遂げようとすることは、同時に、シャングリラという独特のルールのある男娼にとっては天国のような空間であり、フィーにとっては辛い世界から救ってくれた救世主が創り上げた安息の地からの追放を意味する、という設定の切なさ。これがアポロやフィーと鼓動まで共有してしまいそうになる没入感の中、えげつないほど、胸を切なくさせるということ…
BLにハマってある程度の数の作品を読んでくると、ハマりたての頃より面白いと思える作品が減ってしまう。また、時代の変化を先取りして同性愛が当然だったり結婚や妊娠できたりと多様な世界観の作品が生まれてるけれど、BLで出会いたい切なさに欠ける気がしてグッと来ないときがある。海外作品の日本版を読むことも増えたけど、文化的な背景や制度が違うためかハマれなかったり。以前「同性婚が当然になったらBLは廃れるのか?」というお題があり、絶対廃れん!と思ったけど、切ないと感じる要素の変容はあるかもと思ったことがあって、時代や制度が変わっても普遍的に良い作品って意外と少ないのかな…と思っていた時、この神回を読み、どのような文化や制度のある国の人が読んでも胸苦しくなるほど切ない作品を創り上げる座裏屋作品の持つ普遍性に感動し、長文レビューを書いてしまいました…。はー、客に抱かれに行くフィーを止められないアポロの葛藤に感情の全てを持ってかれた…*最新話、感無量…こんなアポロを見られるなんて…長年の読者の思いが叶えられて皆で祝杯をあげたい気分です( ^ ^ )/□
いいねしたユーザ66人
レビューをシェアしよう!