このレビューはネタバレを含みます▼
最終巻を読むまで傑作だと思ってた。受けも攻めもイイ感じに悪癖こじらせて病んで歪んでるし、執着攻め受け好きは萌える。モブレやSMプレイも最高にエロくて気に入っていた。
最終巻を読むまでは。
4巻……連続殺人事件の真相自体は意外性あってよかったものの、山男の正体と陽平の実家の真実とそれに対するリアクションで「はあ?」と一気に萎え、以降のストーリーが全然頭に入ってこなかった。
何が無理って山男の行動が美化され感動的なエピソードとして語られてる事。ロシアに来た親族に言われるがまま新生児の息子渡したの?女房の意見はガン無視?写真じゃ赤ん坊の陽平抱っこして幸せそうに笑ってたけど、勝手に渡したんかい。「気持ちが決まったら空港にこい」って猶予として与えられたの数時間しかないが奥さん説得できたんか。逃亡犯とかお家の事情とか女房と息子に全然関係ないんだが。
陽平の父親、全共闘世代って事は1968~1969年に大学生か。今何歳やねん。何歳で子作りしたねん。陽平は二十代半ば~後半っぽいし、病床の父親も還暦行ってるようには見えなかったぞ。
息子のピンチに体が動いて、って……なんで陽平や大門感動してるの?ソイツ妻や仲間が死んで寂しいからって自分が売った子供にのこのこ会いに来た男!まだ赤ん坊の息子を独断で旦那実家に売られた奥さん死んでる!!成長した姿一度も目にする事なく会えずじまいで、自分だけちゃっかり思い出作りしたんかい!!
このエゴの極みの行動に登場人物が誰も突っ込まず「父親の鑑だ」「お前は愛されてたんだ」って倫理に納得できない。素直にエロに萌えたい、大団円を祝いたいのに、ストーリーの矛盾と母親の存在を一切スルーする陽平のありえなさが際立ってぽかーんとおいてけぼり。というか陽平の背中の傷痕の理由そんな事?もっと屈折した背景想像してたら短絡すぎ。
受けと攻めが幸せならそれでいいと思い込もうとしたが、自分も女である以上、どうしても山男の妻の心情を想像してしまい拒絶反応。大門の元婚約者も最終巻では完全スルーで未登場。BLに突っ込むのも不毛かもしれないが、それにしたって女性の扱いが男にとって都合よすぎ雑すぎ。
正直エロは省略していいから、そのへんの心情や経緯を丁寧に描いてほしかった。
陽平と両親の対決ももっとドラマティックに描いてほしかった。