それから、君を考える
」のレビュー

それから、君を考える

小松

独特の切なさに惹きつけられます

ネタバレ
2023年2月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ キラキラ光る夏の海から始まり早春の雪の中に終わる表題作は、過疎の田舎町から東京の大学進学を目指すタカシと親友のヤスのお話。閉鎖的で未来の無い町に見切りをつけたタカシのたった一人の味方であるヤスは、穏やかで小さい頃から何でも出来るのに豆腐屋を継ぐと決めています。予備校も無い田舎町で受験勉強に孤軍奮闘するタカシを、ヤスは支え励まし続けます。旅立つ前の日に明かされるヤスの心情と別れが切なく深い余韻を残します。『最後の命令』高校の同窓会で来なかった友人に思いを馳せるお話。不思議な関係だった相手を大切に思い出すひと時が切り取られます。『Young oh! oh!』美少女フィギュア趣味をひたすら隠す佐古啓二くんは、リアル女子避けに、たまたま通りがかったヤンキーの荒井辰郎くんのことが好きと言ってしまいます。見るからに怖そうな辰郎くんは、まんざらでも無さそうに「これからよろしくな」なんて言うのでした。辰郎くんの見た目と中身のギャップが良きです。『夜明け前が一番暗い』壊れかけの家庭の中で必死に良い子でい続ける要ちゃんを一生懸命に支える大ちゃんのお話。表題作と双子のようなテーマのお話ですが、二人で朝を迎えるラストには静かな希望が満ちています。
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