ヴィクトリアミランの代償 【電子限定特典付き】
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ヴィクトリアミランの代償 【電子限定特典付き】

篁アンナ

随所に作者のこだわりを感じる

ネタバレ
2023年3月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ アンナ先生の新刊、3冊同時発売という力作でゆっくり時間をかけて読みました。

誰しも創作と分かってはいても許容出来ないものがあると思いますが今作はそれを顕著に感じます。
不倫という題材でそんな2人の愛を赦せるか赦せ無いかで感想が大きく変わるのではないでしょうか。
以下かなりネタバレ↓

幼なじみでお互い好きなのに、それぞれ別の人と人生を歩みながらも大人になってから予期せず再会してしまう話。
貴斗には妻子がいますが、実子ではなく連れ子、妻との結婚の経緯も恋愛結婚ではありません。この辺りが絶妙にギリギリ許容できるラインを作っています。
だからと言ってokとはならないですが、この背徳感から生じるスリリングな展開に2人は最後どうなってしまうのか、ページをめくる手が止まりません。

不倫は純愛なのかを問う作品では無いように思います。
都会の大通りで雨の中顔も隠さず男同士でキスをする場面などに自分の理性ではどうにも出来ない想いを感じて読んでいて私も心が揺れました。。

再会して想いが通じあってからの蜜月は短くて儚くてあっという間に壊れてしまいます。好きな人の息子に自分が代わりになるから貴斗を母親から奪わないでくれと言われるSAN値ゴリゴリイベントが、誰も幸せにならない不倫の末路を表していて本当にツラい。不倫による愛は悲しみや苦しみを半分こするんじゃなくてお互い1個ずつ持つから倍になってしまう。

それ故にラストは安易な幸せエンドではありません。ですが私はもうこの2人はこの時点で十分罰は受けたと思ったので下巻中盤から辛すぎて目が乾いている瞬間がありませんでした…ビショ…;;

「ヴィクトリアミランの代償」のタイトル回収が秀逸です。
そして装丁がめちゃくちゃ美しい。各口絵にも意味があるし口絵に落ちてるバラの本数が7本。7本の花言葉は「ひそかな愛」、赤青白のバラの花言葉も各巻に合っているので無意味では無いのでしょう。

センシティブな題材なので万人受けはしないと思いますが、ドロドロの愛憎劇という話では無いのでそこまで構える必要はありません。心に残る愛の作品でした…。
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