ライアテア
」のレビュー

ライアテア

岡田屋鉄蔵

柔らかな光の空=ライアテア

ネタバレ
2023年3月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 写真家ゾムと神経生物学の研究者マニのお話。

マニはタヒチ、全ポリネシア人の故郷と呼ばれているライアテア島出身。その神聖な島で13歳のゾムはマニと一瞬出会った。その時の神々しい光景とマニの姿が忘れられず、ゾムはずっとその時の残景を追い求めている。難病に罹り失われていく視力の中でまたマニと再会するが…。

主人公ゾムの人生より、マニのそれまでの人生に心が締め付けられました。10代後半からフランスに居る父に引きとられ、父親と義理母、義理息子と過ごした5年。そこで受けた義理母達からの人種差別によって、マニのアイディンティティは壊されてしまいます。自分は何者であるか?という自尊心は、幼少期に育まれる大切な感情。マニのキラキラとした自尊心はあの島の生活文化の中で育まれた。それを全否定するマニ。それ程の経験(泣…😩)

大学時代のマニの回想シーンで、男性教授?との情事のコマに何故か泣いてしまいました。何がインスピレーション💦(教授のセリフ)ポリネシア人とネイティブアメリカンの違いも分からない教授よ💦 たった1人、辛かっただろうな。共同のプロジェクトとかあったとしたら…大変だっただろうな。それでも得た最高評価(A+)。不公平だという他学生のコマに、貴方はマニと同じだけの努力が出来ますか?と心の中で叫んでしまった。そして博士号まで取れたのは、マニ本人が言う様に彼は本当に天才だったからだろうなと…。

最後、ゾムとマニの島のシーン。この情事は神聖な儀式の様で、たとえゾムとマニが女性同士でも男女でも、性別なんて関係ないシーンだっただろうなと思いました。マニから感謝されるゾム。そんな風に感謝されたのは、地球を映すゾムの瞳が綺麗で個を超えた感覚が彼にはあるからかなと思いましたが…それでも地元の方、マニに受け入れられたなんて、なかなか出来ない事だなと。(同じタヒチに行ったゴーギャンは、死後現地の人達に家を焼かれている…)作者の凄い所は、そのシーンでゾムとマニのそれまでの人生の昇華もしてしまっている所。この物語の完成度の高さ…うぅ(泣)
あとがきの様な1ページも良かった。最後は読んだーという満足感に浸れる、素晴らしい作品でした✨
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