銀座ネオンパラダイス
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銀座ネオンパラダイス

ウノハナ

戦後の銀座に灯る恋と希望✨

2023年3月20日
ガス灯に照らされる銀座の街、橋の下には膝枕で寛ぐ色男。首筋に添える手に愛が見える何とも艶っぽいセピア色の表紙。そして「KAREN COMICS」の看板を潜ませるニクイ演出、小技が効いてますね✨ 戦中戦後の混沌とした時代の銀座の恋の物語。現在と回想シーンを巧みに織り交ぜて構成しています。銀座育ちのボンボンで放蕩三昧の鷹彦と幼馴染みの葵。女の所を渡り歩いては愛想を尽かされて最後は葵の元に帰って来るという、腐れ縁かつ終着点。そんな自分の立ち位置に自負と安心感を覚える葵だが、鷹彦に赤紙が届いてしまい… 「今生の別れ」なんて今は聞く事は無いけれど、当時は戦地へ発つ者、見送る者、言わずとも互いに心積もりをしていた時代。朝まで抱き合った あの一晩の思い出を、鷹彦の匂いと肌の温もりを胸に4年間も待ち続けた葵の 真っ直ぐで強い想い。 あばら家に住み続けたのは帰って来た鷹彦がすぐに見付け出せる様にというだけでなく、鷹彦と過ごした空間を、確かにここに居た、という痕跡を手離したくなかったんじゃないかな… 鷹彦もまた 葵を想うからこその会わずの期間で、互いを想う深さは同じ。愛する人の言葉と存在を支えに生き抜いた2人は強い。2人が抱き合うシーンは互いの存在に喜びを感じ確かめ合っている様で、胸がいっぱいになります。P.158 鷹彦の背中の傷痕に顔を埋め「おまえは 俺にとって銀座のネオンなんだ」からの下りは自然と涙が零れました。喜びも悲しみも痛みも苦しみも 生きているからこそ感じるもので、本当に命は尊いものです。葵の為に成長し、男が男に惚れる魅力を備えていく鷹彦は本物の役者となり、きっと銀幕のスタアとして戦後の日本に希望の光を与える存在となるでしょう。焼け野原で色を失った景色を天然色に染め上げて… BL要素もしっかりありながら、その括りを越えてとても読み応えのある作品でした。復興に向かう人々の逞しさや希望、そして命の儚さと尊さを感じました。夫を戦地で亡くした小百合さんの 自分の足で立って旦那の分まで生き抜いてやる!という気概とヤリ手な面がカッコ良かったです。鷹彦のべらんめえ口調が時代背景に合っていてキャラを引き立てていました。華があって人を惹き付ける才能もありで、スタアの階段を駆け上がるのは時間の問題でしょうね。また BLとしては中々見ない時代設定で新鮮でした。 とても心地好い読後感を得られる素敵な作品で、出会えて本当に良かったです😊
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