渾名をくれ
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渾名をくれ

新井煮干し子

葛藤

ネタバレ
2023年3月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 2回読んでからレビューを書く。きっと、読み手によって受け取り方は様々だろう。
「ジョゼ」は本名ではない。中学生で出会った天羽とジョゼ。天羽は「初恋だと思った」と考えるが、ジョゼの美しさを愛した天羽はいつしか自分の世界、自分の神様にしてしまった。だから、愛しされることは望まず、愛し続けるだけ。美しさは外見だけのことではなき、「骨まで」でありジョゼを構成する世界そのものを言っているよう。後輩モデルの剣に「同じ人間」と言われて自分の矛盾に気づき始めたのかも。天羽は、ジョゼを神様と言いながら、触れてセック スもするがジョゼの願いに応えているだけと思っている。もう、この時点で神様じゃないのになぁ。蓋をしている。気が付かないようにしている。でも、ジョゼが愛し愛されることを望んでいる。ジョゼ一人が寂しさを抱えていて切ない。自分が描きためた無数の世界=ジョゼは本物にはならない。天羽のフィルターだから。ジョゼがモデルとしてジョゼの名前を捨てたとき、中学生のときのように黒髪に戻したとき、ジョゼの前でジョゼを描けるようになった。天羽だけのジョゼ。神様を人間の位置まで引き下げた。世界は繋がっているけれど、ジョゼは天羽の世界。剣に手助けしてもらわなければ、世界から出ることもできなかった。作者様があとがきで信仰の話をしていたが、心の拠り所と考えるとき、確かに天羽にとってはジョゼはそうで道理を超えた存在だったが、自分と同じ人間ならば尊ぶだけではいられなくなる。
ジョゼを愛しているから、ここにいて欲しい。ジョゼにとっては本当の願いが叶うかもしれない。
次に読んだら、また違うことを考えるかもしれない作品。文学だなぁ。
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