ピットスポルム 合冊版
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ピットスポルム 合冊版

三上志乃

小田島の危うさにヒリヒリする

ネタバレ
2023年3月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ コミックスが発売された時からずっと気になっていて、少し前に70%オフのクーポン利用で購入。合冊版は全8話+描き下ろしで合計396ページ。コミックス2冊分としても値段はやや高めかなと思いますが、クーポンや還元などでお得に購入できる機会にぜひ。
さてさて、本作は全寮制高校に通うスクールカースト上位の小田島×真面目な矢野のお話で、2年生になった二人が寮で同室になったことをキッカケに距離が段々縮まっていくお話です。まず小田島ですが、普段チャラけた感じなのに心の闇がすごい深い。それを隠すため普通に振る舞おうとしてるけど、すごいぎりぎりのバランスというか、水が表面張力でなみなみになったグラスみたいな危うさで、それがとても上手く表現されていたと思います。子供の頃の幸せで輝いていた日々との対比の描写が挟まれて、なんだか胸が痛くなりました。父親の情事を見たのはただのキッカケに過ぎなかったかもですが、そこから坂道を転がるように落ちていく小田島。女性と関係することで自分を矯正してきたつもりが、矢野に出会って本当の自分を取り戻していく。はぁ〜、最近あんまりこんなにヒリヒリする作品を読んでいなかったので、すごい消耗しました(良い意味で)。矢野と矢野の友人たちが本当に良い子たちで、もっと小さい頃、小田島が傷付いていた時に二人が出会っていたら、小田島の今は大きく変わっていたんだろうなぁと。でもきっと今からでも遅くないはず。二人のこれからも見たいけど、こういった余韻で読み終わるのも良いのかもと思いました。
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