薫りの継承【上下巻セット・単行本未収録イラスト付】
中村明日美子
このレビューはネタバレを含みます▼
オードトワレ偽る薫り。
兄と弟。正しくない愛を認めたくなかった。
多くを語るなんて野暮!でも、語りたくなっちゃうそんな作品です。レビューというより考察を書かせてください。
違うなと思ったら無視してください。
兄は弟からの思慕に気づいていた…
自らに湧き上がる恋をおさえていた、受け入れてはならない。母への裏切りの結果の子供を“弟”と認めたくない。それでも独占したい気持ちを冷たく接することで抑えていた。
あの日、眼帯の男にイタズラされた弟を見てその男に殺意を覚えたのではなかろうか?裕福そうだった優雅な眼帯の男は兄によってか、または時代の流れか社会的に死んだ状態になったのかもしれないと思えてきた。…同じ匂いがする人間?私と同じ末路になれ?ホームレスの男は、やさしいからねと言った。それは二人の関係を世間に知れ渡るように仕向ける脅しだと思った。銀行の前で待ち伏せしているところ、執着と復讐心を感じるところからも、かなりの期間脅されていたのではないか?口止め料とも受け取れるそこそこの金額を支払っているところも、今後の社会的な死つまり世間への暴露を懸念しているように感じた。あってはならない子との関係、かつて自分の父がしたような妻への裏切り、弟を守りたい気持ち、その全てがエゴであっても…止められなかった。真っ直ぐな愛情を欲しいのは、誰でも同じ事。正しくないとわかっていても。虚しさは次の世代へ、あの薫りのする人へと帰っていくのだ。兄その妻、弟と息子、4人は絡み合ったまま。愛を知らずに死ぬよりも愛を知りたかった人たちの物語
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