憂鬱な朝
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憂鬱な朝

日高ショーコ

人間の成長と愛を知る壮大な物語

ネタバレ
2023年3月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 幼い子供が子爵となり成長していく様子とその家令との恋の行方、そしてその家令が人を愛することを知る様子を描いた壮大なお話です。
時代物が好きな私にとって、身分やしきたりなどに縛られ自由がままならない中で、藻搔き苦しみながら成長していくストーリーというだけでもとても面白かったです。だけど、この作品はそれ以上にキャラたちの魅力と様々な愛に溢れる素晴らしい物語でした。
暁人と桂木の二人の成長と愛を紡ぐお話が一つ一つとにかく丁寧に描かれています。暁人の成長していく姿は特に素晴らしく、厳しく育てられた少年期、反抗的でぶつかり合った青年期、前向きに歩み続ける成年期と、多くの学びを受け多くの人との繋がりから人間の内面が成長していく様が壮大なドラマを見ているかのようでした。暁人の明るくて優しく、ただただ素直なその性格に、読者だけでなく登場人物全てが心奪われていたように思います。
そして、そんな暁人の真っ直ぐな想いが、桂木をも変えていきます。自分の出自に振り回され、家名や能力でしか自分を見てもらえなかった桂木が、暁人の愛でようやく自己を認識し、愛し愛されることを知って、戸惑いながらも受け入れて変化していく様子がとても愛おしく感じました。カラカラに干からびた心に、暁人の絶対に諦めない強い想いがじわじわと沁み入る様子は本当に見事です。桂木の瞳にどんどん光が灯り、表情や行動に愛が宿る様子は見逃せません。また、えちシーンではどんどん妖艶になっていくのに、朝が来るとそっけない、そんなギャップも素直になれない桂木らしくて良かったです。
二人の愛が一筋縄ではいかないのも最高でした。ただ焦れったいのではなく、お互いが聡明であるがゆえであり、周りが見えすぎているからこそ上手くいかないというのは、この時代の高い教育を受けた人たち、能力のある人たちを表していて、キャラの性格と時代背景がとても良くマッチしていると思いました。
時代物BLの神作品だと思います。
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