年々彩々
」のレビュー

年々彩々

秀良子

落語から題材を取った2編+1編の短編集

ネタバレ
2023年3月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『金魚すくい』フラフラして身を入れて働かない与平は女房に逃げられ、それでも働かずにゴロゴロしていると貧乏神が現れます。働いてくれと頼む貧乏神から金を借り、さらに内職までさせる与平の筋金入りのクズっぷりが面白いです。そんな与平の不思議な憎めなさ、ほろりとさせる貧乏神の情の深さ、キャラの魅力が際立つ短編です。『デラシネの花』長生きするようにと付けられた名前でとんでもなく長生きしてしまう寿限無さんのお話です。1話目とリンクしており、美形の元貧乏神が登場します。長過ぎる時を生きる為に根無草=デラシネのような生活を送る寿限無さんがやっと見つけた拠り所が元貧乏神なのでした。こちらもなんとも切ないシーンが情緒深く描かれます。巻末の描きおろしもこの二人のお話です。『小向家の事情』お父さんと蓮司と颯太の3人家族のお話。お母さんがいなくて蓮司がいる、それが普通じゃないことに気付いた少年の心情が切り取られます。いずれも作者らしい佳作揃いです。
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