キスは番にひざまずく【単行本版】
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キスは番にひざまずく【単行本版】

エヌオカヨチ

記号じゃなくひとりの人として

ネタバレ
2023年4月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 画が好きで、ずっとカートに入れっぱなしにしていたこちらの作品。オメガバがあまり得意ではない私は、迷っておりました。オメガバって重たい印象が強くて、αとΩの主従関係がはっきりしてて…みたいなのが、結構苦手で。でも、この作品はなんでもっと早く読まなかったんだろ、と思えるくらいよかったです。たぶん、αの伊織が普通っぽくてとてもいい子だったからかな。αの伊織とΩのレオの関係が対等で、伊織の言うように、αとかΩとか記号じゃなく、ただただそのままのレオを愛そうとしている伊織に好感が持てました。αを喰わずにはいられないレオの生い立ちや体質。本能や運命に必死に抗って、ひとり強く生きていこうとするその奥には、寂しさや母に対する悲しみや庇護、そして運命に従いたい、運命の相手に守られたいと強く願う心を、必死で隠してきてたんでしょうね。そんなレオの全てを、まるっと受け入れて包み込む伊織が素敵。やっぱりストレートに真っ直ぐに、思いを言葉で伝えられる人は無敵だな、と私は思います。本文にもあったけど、形にしても言葉にしても愛なんて目に見えない不確かなもの、どこまで信じていいのか分からない。でも、記号ではなくひとりの人として、相手を見て自分を曝け出して、何度でも言葉を紡いでいけば、それは言霊となって大きく互いの中に宿り続けるのかな、と。オメガバに振り回されて辛い道を辿ってきたレオだけど、そのオメガバに最後救われてよかった。レオがα喰うモブ描写もほぼなく、エチは伊織とのものだけなので、モブ苦手な方も大丈夫かと(私も苦手です)。エチもねぇ、レオが綺麗で可愛い。けどけど、伊織の必死なとこと優しくてあったかいとこも、読んでて多幸感。友達の千歳にもいい相手が見つかりますように…。素敵な作品を、ありがとうございました。
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