銀河英雄伝説
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銀河英雄伝説

田中芳樹

確固たる世界感が素晴らしい作品

2023年4月11日
おそらく日本の架空歴史小説界は『銀英伝以前』と『銀英伝後』に分けられる、そう思わせるほどの作品。特に作品の根幹となる「最良の専制政治」対「最悪の民主政治」というこのコンセプトを超える設定は恐らく二度と出てこないのではないか。
その一見皮肉とも言えるストーリー上の背骨の中で多彩な人間ドラマが展開され、単純な善悪ではない物語が繰り広げられる。主人公二人のキャラクターがとても魅力的であると同時に、脇役たちも個性的。設定ではわずか数年間の話であるにもかかわらず、そこには確かな歴史絵巻が展開される。
そのうえ、読む年齢によって受ける感じが違う。学生時代に読んだときの印象と社会人になってからの印象が変わっているのは、作品に深みがある証拠だろう。累計発行部数1500万部、繰り返しアニメや漫画といったマルチメディア展開が行われたのも納得である。
内容に好き嫌いを持つ人がいるのは当然だとは思うが、日本のSFやファンタジーといった創作小説界において無視できない作品であろう。大多数の人には読み切った時の読後感に満足が行く作品であると信じている。
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