SUPER NATURAL
」のレビュー

SUPER NATURAL

絵津鼓

飾り気のない気持ちがすべて。

ネタバレ
2023年4月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ BLはエッチシーンがたくさんあってなんぼと思っていますが、どれだけ男の子がガツガツエッチをしたってキャラクターの心情がまるきり無視されていればむしろ空々しいもの。その点SUPERNATYURALは暢、大地くんの間で揺れ動く微細な心情の変化を非常にうまく掴んだお話で、エロ度が低めでもたっぷりとした満足感と読みごたえがありました。

本書は学生編、上京編とわかれますが、私は学生編に一目ぼれ。
まず初めに、暢くんの人物像がとてもよい。根は誠実だけれど大好きな人(大地くん)の言葉には反抗してしまう天邪鬼な性格。だけど中盤からはどうして大地くんが起こす行動に苛立ってしまうのか、その理由を真正面から見つめるようになる。
自分の複雑な心情を説明することが難解だった第一話では「(大地くんに対して)こんな気持ちがなくなるように葛藤している」と暢くんのモノローグが入りますが、最終的には「大地が好き」というシンプルな自分の気持ちと体の波長のチューニングができており、彼の雰囲気もぐっと柔らかくなっています。
下巻では大地くんLOVEの波動が隠しきれず、もはやダダ漏れしていてとてもかわいい笑。いやわかるよ、おめめがぱっちりとした男の子はにっこりと笑うところも照れるところも読者の心をとろかす魔力があるもの。絵津鼓先生の手掛けるベビーフェイスの男の子は国宝級に愛おしい。

ふたりの間で交わされる蜜事は、エロいというより清らかそのもの。特にたっぷりとコマを割いた初キスシーンにはドキドキしました。唇にする前に、大地くんのおでこに口づけてキスのワンクッションをおく暢くんは萌えのすべてを詰め込んでいるみたいで。とても甘酸っぱい気持ちになりました…(*´Д`)

性別関係なく、君が大事でお前が大事。それを素直に認めることのできない自分の弱さ、言葉の齟齬、周りの目。上下巻それぞれ二人には苦難が襲います。でも最後にはいつだって飾り気のない愛が残る。いいBLに出会えました。
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