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今月(5月1日~5月31日)

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シーモア島
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投稿レビュー
  • インターネット・ラヴ!

    売野機子

    ふたりの世界にのめりこめない悲しみ
    ネタバレ
    2023年9月27日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ツイバズで漫画の存在を知りました。ウノくんのかわいさの特徴を「ショッパーを並べたホテルの一室で踊り狂うところ」「捨てられた動物に日本語の名前をつけて保護するところ」など、高い解像度の言語ですらすらと述べることのできる天馬。かなわない恋にもんどりうつ彼の姿はあまりにリアルの人間臭く、ひいては人や物事を見る作者さんの観察眼が鋭いことに感激し、購入に踏み切りました。
    しかし2話を読んで以降、アレ?と引っかかるシーンもありました。特にラストの、ウノが天馬に感じた激しい愛はいったいどこから発生したんだろう。三日坊主の彼が1ヶ月で日本語を習得するだなんて、並々ならぬ感情を抱かない限り起こりえないと思いますが、トリガーが見えてこない。また天馬の両親はどうしてそこまでセクマイである彼を理解しようと努めてくれるのか、そこの深堀りもほしいと思いました。(彼らのようなすてきな人たちが、数ページで退場してしまうのももったいない)もうすこしページがあればまたちがったかもしれないです。作者さん、そうした細部までを取りこぼさず描き切ってくれる技量は絶対にあると思うので…。
    また登場する女性キャラ(なーちゃんや職場の人たちなど)も非常に魅力的だったのですが、ウノの彼女だけがBLにありがちな当て馬ポジに割り当てられており、そこもすこしモヤモヤ。
    1話を試し読みして以来発売日を心待ちにしていたぶん、辛口レビューで投稿します。何度も読み返せば新たな気付きも得られると思いますがひとまずはこれで…。
  • SUPER NATURAL

    絵津鼓

    飾り気のない気持ちがすべて。
    ネタバレ
    2023年4月23日
    このレビューはネタバレを含みます▼ BLはエッチシーンがたくさんあってなんぼと思っていますが、どれだけ男の子がガツガツエッチをしたってキャラクターの心情がまるきり無視されていればむしろ空々しいもの。その点SUPERNATYURALは暢、大地くんの間で揺れ動く微細な心情の変化を非常にうまく掴んだお話で、エロ度が低めでもたっぷりとした満足感と読みごたえがありました。

    本書は学生編、上京編とわかれますが、私は学生編に一目ぼれ。
    まず初めに、暢くんの人物像がとてもよい。根は誠実だけれど大好きな人(大地くん)の言葉には反抗してしまう天邪鬼な性格。だけど中盤からはどうして大地くんが起こす行動に苛立ってしまうのか、その理由を真正面から見つめるようになる。
    自分の複雑な心情を説明することが難解だった第一話では「(大地くんに対して)こんな気持ちがなくなるように葛藤している」と暢くんのモノローグが入りますが、最終的には「大地が好き」というシンプルな自分の気持ちと体の波長のチューニングができており、彼の雰囲気もぐっと柔らかくなっています。
    下巻では大地くんLOVEの波動が隠しきれず、もはやダダ漏れしていてとてもかわいい笑。いやわかるよ、おめめがぱっちりとした男の子はにっこりと笑うところも照れるところも読者の心をとろかす魔力があるもの。絵津鼓先生の手掛けるベビーフェイスの男の子は国宝級に愛おしい。

    ふたりの間で交わされる蜜事は、エロいというより清らかそのもの。特にたっぷりとコマを割いた初キスシーンにはドキドキしました。唇にする前に、大地くんのおでこに口づけてキスのワンクッションをおく暢くんは萌えのすべてを詰め込んでいるみたいで。とても甘酸っぱい気持ちになりました…(*´Д`)

    性別関係なく、君が大事でお前が大事。それを素直に認めることのできない自分の弱さ、言葉の齟齬、周りの目。上下巻それぞれ二人には苦難が襲います。でも最後にはいつだって飾り気のない愛が残る。いいBLに出会えました。
  • カラーレシピ

    はらだ

    サイコパスな上巻、人間らしい?下巻
    ネタバレ
    2023年4月19日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 上巻はにっこり笑顔の反面裏ではとんでもない下策を用いて笑吉くんの心を掴み、下巻ではその行為諸々すべてがばれてしまった福介が無理やりにでも笑吉くんの心を取り戻そうとする流れとなっています。私は「相手が自分の思い通りになるのがたまらない」のではなく「相手が自分の思い通りになるのはたまらないけれど、心の奥底で罪悪感が時折顔を覗かせる」人間の心情が性癖なので、カラーレシピの下巻のほうがかなり刺さりました。本当に、りくくんの言う通りふつうに接していればまじめで優しい笑吉くんは振り向くのにねえ。でもできない。「よっぽど自分に自信がないんですね」ととりくくんは言っていましたが、読者の自分は「よっぽど笑吉くんのことを信じてあげられないんだね」と心のなかで呟いてしまい、虚しさが募りました。

    ああでもよかった、いじめたおした笑吉くんの涙が、あのときの涙と違うと気づくことができて。「かわいそうだ」と一歩引くことができて。拘束した笑吉くんの前で「たたない…」と呟く福介は罪悪感にまみれた情けない顔をしていてたまらなかったなぁ。
    今後も彼は笑吉くんを手に入れるがために再び水面下で手引きするのでしょう。でも根底には「傷つけて勝ち取った愛は愛とみなすことができない」という気持ちがあるのですし、えげつない乱暴を彼に働くことはないだろう、と思います。…しないでね!?苦笑

    物語のラスト。自分の足で福介の店に向かった笑吉くんは、確かに彼の色に染まりつつあるのかもしれない…。でも彼は、福介が覆い隠していしまいたかった真実を知っている。痛みの伴う性行為を強要したことも。それでも自分の足で会いに行こうとするのですから、多少彼が狂っていることも理解したうえでそれでも福介と一緒にいたい、そんな覚悟もまた、背負っているのだと思います。

    エロに関して言うとちょっと物足りなさがありました。というよりは、笑吉くんと福介くんが甘々にエッチするシーンをたくさん見たかった!笑 なにしろじたばた暴れる笑吉くんをやさしーくなだめすかして、絆すように囁いて、ベッドにまで持ち込む福介のSEXスタイルが大好きなのです。一読者、ふたりのイチャコラを渇望…!初エッチシーンや一祝くんにバレちゃったキスシーンはとてもエロかったです( *´艸`)
  • ネガ

    はらだ

    指の先までジンジン痺れる愛と憎
    ネタバレ
    2023年4月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ピアスホール、リスタート、わたしたちはバイプレイヤー。どのお話も好きですが、後悔の海・スイメンカがいちばん好みです。特にスイメンカの方は、短い話でありながらも長い時間をかけて何度も舐めるように読んでいます。笑

    はらだ先生の持ち味は、巧みなキャラクターの表情の描き方だと思っています。たとえばスイメンカの以下のワンシーンで。
    「(昔ふられたみたいに)キモイって言われるかもしれない」
    そう呟いて受けは力なく笑い、攻めはその言葉を前に唇を噛みしめて俯くのですが、この何気ない会話の流れに、表情に、言葉にはしがたい2人の微妙な関係性が如実に表れており、毎回読むたびにため息をついてしまいます。
    このふたつの短編に限らず、はらだ先生の絵には読者の琴線を揺さぶるほどの説得力が宿っているのだとネガを読むたびに思い知らされます。

    もちろんのこと、はらだ先生ならではの赤裸々Hシーンも大大大好き。特にスイメンカの初Hシーンでは、受けくんの挙動がなにからなにまでかわいすぎて拝みたくなるほどです。ピアスホールに登場する臼井さんは掴みどころのない大人のエロティシズムを発揮するのですが、受けくんは対象的に未成年ならではの青臭さと色っぽさが存分に醸されています。たまらない…。
    緊張に力んで涙する受けを攻めが優しくキスして抱くのも好きです。そのぶん後々行われる寒風吹き曝しねじ伏せ屋外プレイは温度の落差があまりにえぐい、つらいとなるけれど。
    でも何度も見返してしまう。容赦なく何度も抉られる。

    ボタン掛け違いエンド、ハッピーともバッドとも言い難いエンドが性癖な方にも、そしてはらだ先生の痛グロ系BLを読んでみたいけどあまりに過激なものは苦手だ…という方にも、入門書として(?)おすすめできます。というか全国のBL愛読者さんたちに届いてほしい、この漫画は。そんな気持ちを込めて。大好きです。