ノット
」のレビュー

ノット

秋平しろ

もつれていたのが解けて結び目になるように

ネタバレ
2023年5月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 先生の作品はどれも素晴らしいですけど、今回も良かったです。まずタイトル…『ノット』は「knot」だと思うのですが、別れと再会を繰り返す二人、しかも別れ方が別れ方で…まぁまぁ致命的というか決定的というか次がない感じなんです。だから勝手な解釈で「knot=紐やロープなどの固いもつれ」みたいなマイナスのイメージを持っていました。でもラストの森本のセリフから、プラスの意味の「結び目・絆」だと知った瞬間、何とも言えない温かい気持ちになりましたし、「先生、うまいな(タイトルとの絡め方とかストーリー展開が)流石だな」と思いました。もしかしたら「もつれ→結び目」マイナスからプラスの両方の意味を持たせていたのかも?と、深読みしてしまいました。試し読みの部分だけでは、イジ◯の要素が強くて、その被害者と加害者が主人公であり当事者でもあるという複雑な状況で、どこをどうこねくり回したらBLになるのか不安だったんですけど、たった1冊の中にギュッと綺麗に纏まっていたと思います。作品全体と大和田のイメージは終始重くて濃かった気がしますが、森本の調子外れのようでいて空気どころか結末まで読んでいたかのような飄々とした明るさが、木漏れ日のような穏やかな雰囲気を演出していたと感じました。森本の「顔だけが取り柄」という、この一言はメチャクチャ深いなと思いました。長短・表裏一体の言葉なのに、強力な武器ですから、知ってか知らずかここぞの場面で使うところが憎いよなーと思いました。
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